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菅さんに「聞く耳」と「任せる度胸」があったなら

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

やっぱり、菅さんの責任は重い。政府の福島原発事故調査・検証委員会の中間報告が出てから、その思いを強くしている。事故が起きてから、菅さんの資質を問う議論が巻き起こった。取材の過程で「官邸が聞く耳を持たない」という嘆き節も聞いた。それでも一国の総理なのだから、専門家の衆知を集めるルートはあるだろうと推し量っていた。だが、中間報告を読むと、本来なら機能すべき情報ルートがあちこちで寸断されていた様子がわかる。そこをつなぐように指示し、政府という大きな組織がスムーズに動くようにするのが最高権力者の菅さんの役目ではなかったか。「俺がやらねば」という使命感は尊い。ただ、何をやらねばならないのか、を間違えたと思う。

 事故調査・検証委員会は、456人の聞き取り調査を踏まえて中間報告をまとめたが、当時の閣僚らの聞き取りはこれからである。菅さんからの聞き取りもまだだ。その段階で判断するのは公平さを欠くかもしれない。

 それでも、中間報告から事故後の関係者の動き方はかなり見えてきた。思うに、権力を持つ者の責任は、その権力を適切な人に委ねるところにある。だが、菅さんはそれをしなかった。

 ベントをどうする。注水をどうする。そうした判断を東京にいる政治家ができるわけがないと常識的に思う。にわか仕込みの知識で判断を下すのは、百害あって一利なしだろう。政治家がすべきなのは、

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