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メディアと数字/誤差の表記をなぜ嫌う

須藤靖 東京大学教授(宇宙物理学)

 前回書いたように、世の中には、「桁」さえ合っていれば困ることがない事のほうが多い。ただ場合によっては、もう少し正確な数値が必要なこともある。その際に心しておくべきなのは、細かい数値が与えられているからといってその「意味」の正確さは保証されていない、という点である。大学の物理実験などでは学生に「誤差の与えられていない数値は価値がなく信用してはならない」と教え諭す。にもかかわらず、この普遍的な真理が世間では正しく理解されておらず、結果的に善良な人々に大きな誤解を与えてしまう場合があるように思える。

 たとえば、内閣支持率の調査で、仮に支持率が前回51.3%、今回は49.7%という数値が得られたものとしよう。この結果から「日本国民」の内閣支持率にどのような変化があったと解釈できるのだろうか?

先に結論を言えば、「この情報だけでは推定不可能」が正解である。それは次のような極端な例を考えてみればある程度納得してもらえると思う。

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