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ガレキ受け入れで分断の危機にある故郷・島田市を救いたい

湯之上隆 コンサルタント(技術経営)、元半導体技術者

私の故郷である静岡県島田市が、昨年末、岩手県大槌町および山田町のガレキ受け入れを表明した。実際に2月15日、約10トンの木材チップ化したガレキが島田市の焼却施設に運び込まれ、16日から試験焼却が始まった。
拡大試験焼却の中止を求めて市職員(中央左)に詰め寄る反対住民ら=2月15日、島田市役所ロビー

 これに伴って、島田市は反対派と賛成派が真っ二つに分かれ、あの穏やかだった街が緊迫した空気に包まれている。反対派は9,532筆の著名を集め、15日には市役所で百数十人規模の反対抗議を行った。一方、賛成派も1,122筆の著名を集めて提出する異例の事態となった。たった10万人足らずの島田市であるにも関わらず。

 私は15日に、中学の同級生から「ガレキ受け入れ阻止に力を貸してくれないか?」と連絡を受け、初めてこの騒動を知った。急な話に驚きつつも、原子核工学出身の私は、まずは、「放射線とは何か? 放射線に当たると(被ばくすると)何が起きるのか? どこまで安全でどこから危険と言われているか?」を理解してもらうことが先決だと考え、試験焼却が始まった日(16日)に、島田市の友人を訪ねた。

 友人は子供がいるお母さんたち数人を集めて待っていた。「もう島田はダメだ、引っ越したい」というお母さんもいた。また尿からセシウム137が0.1ベクレル/kg 検出され、「もう死ぬかもしれない」と泣いている子供がいる話も聞いた。

拡大

 私は、数時間に渡って、放射線とは何か? ベクレルおよびシーベルトとは何を意味するか? 飲食物の安全基準値は何ベクレル/kgか? 日常生活中で平均して1年間に2.4ミリシーベルト(毎時に換算すると0.27マイクロシーベルト)被ばくをしておりそこまでは安全圏、しかし1年間100ミリシーベルト(毎時約10マイクロシーベルト)を超えると癌が増加すると確かめられていることなどを、図を使って、お母さんたちが納得できるまで、とことん説明した。

 そして、お母さんたちとのやり取りを通して、この騒動の裏には、看過できない要因が潜んでいることを確信した。

 まず、この騒動を煽っている人たちがいる。それはどうやら島田市民ではない。例えば、「首都圏に居住は無理、東京から避難しないなら人間関係を断つ」というような過激なブログを書き続けている元日本テレビ社会部デスクの木下黄太氏などが、デモの人集めを行っている(他にもいるかもしれない)。

 お母さんたちの話を聞くと「被災地の役に立つから最初はガレキ受け入れに賛成だった」という。ところが、ガレキには放射性物質が(微量かもしれないが)付着している、微量でも焼却し続ければ住民は被ばくする、被ばくすると子供に癌が広がるという扇動的な話をあちこちから聞かされているうちに、「ガレキ受け入れ絶対反対」になっていってしまったようだ。

 もう一つの要因は政治不信だ。その根底には

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筆者

湯之上隆

湯之上隆(ゆのがみ・たかし) コンサルタント(技術経営)、元半導体技術者

1987年京大修士卒、工学博士。日立などで半導体技術者を16年経験した後、同志社大学で半導体産業の社会科学研究に取り組む。現在は微細加工研究所の所長としてコンサルタント、講演、各種雑誌への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)、『電機・半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北-零戦・半導体・テレビ-』(文書新書)。趣味はSCUBA Diving(インストラクター)とヨガ。 【2016年8月WEBRONZA退任】

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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