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情報文明の次に来るものと科学(上)

―遺伝情報・脳情報・デジタル情報―

広井良典

広井良典 京都大学こころの未来研究センター教授(公共政策・科学哲学)

 インターネットやさまざまなIT関連技術が社会にもたらすインパクトをめぐる議論は枚挙に暇がない。最近では、フェイスブックなどが中東の民主化運動において果たした役割について多くの議論がなされていた。しかしながら、こうした情報技術のダイナミックな展開が人間にとってどのような意味をもつかについて、それを長期的な時間軸の視点、あるいは人類の歴史の大きな流れの中で展望するような議論は意外に少ないように思われる。ここで試みたいのは、そうした関心からの基本的なスケッチである。

 議論の手がかりとして、人間にとっての「情報」の意味について、かつてカール・セーガンが提起した次のような視点が参考になる(カール・セーガン『エデンの恐竜』秀潤社、1978年)。すなわち、情報は大きく「遺伝情報」と「脳情報」に区分することができる。前者はいわゆるDNAに組み込まれた情報であり、これは、ほかでもなく遺伝子(という情報メディア)を通じて親から子へとバトンタッチされていく。その中身は、身体の生物学的組成に関する情報がまず重要だが、一定の行動パターンに関する情報も含まれている(たとえば、ネコが毛づくろいをするのは親に教えられるものではなく遺伝情報の中にその行動パターンが組み込まれている)。

 しかしながら、生物が複雑になっていくと、この遺伝情報だけでは不十分になってくる。

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筆者

広井良典

広井良典(ひろい・よしのり) 京都大学こころの未来研究センター教授(公共政策・科学哲学)

1961年生まれ。84年東京大学教養学部卒業(科学史・科学哲学専攻)。厚生省勤務、千葉大学法政経学部教授を経て現職。この間、マサチューセッツ工科大学客員研究員。社会保障、医療、環境などをめぐる政策研究からケア、死生観などについての哲学的考察まで幅広く発信。『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書)で第9回大佛次郎論壇賞を受賞した。

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