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春入学・秋卒業ではダメなのか?

須藤靖

須藤靖 東京大学教授(宇宙物理学)

 最近「東京大学は秋入学を決定したそうですね」と言われることが多い。「いえ、そうではなく、あれはあくまで中間報告でしかありません。これから学内での議論が本格的に行われるはずです」とお答えはしているものの、私のような末端の教員にはその気配は感じられない。その間に、世間には秋入学を歓迎するような声だけが伝えられているような気がする。おそらく早晩、秋入学に反対するような大学教員は守旧派というレッテルを貼られて疎んじられることだろう。だからこそ今、なぜ秋入学なのかを考えてみたい。

 2011年12月10日の本欄で、秋入学を実施するならば、入試を現在よりも数カ月遅らせるべきであるという意見を述べた。ただし、それはほとんどの大学が同時に秋入学に移行する場合の話である。でなければ、たとえば東京大学を第1志望とする学生は、念のために先に入試が行われる他の大学を受験し、一旦そこに春入学しておく必要がある。これは明らかに問題である。したがって、一部の大学だけが秋入学に移行する場合には、入試は現在と同じく2月に行わざるを得ない。

 この矛盾を解消すべく提案されているのがギャップタームなのであろうが、私にはそこにあるはずの理念が理解できない。半年間、今まで知らなかった世間に飛び込んで新たな価値観・世界観を身につけることは素晴らしい。しかしそれを本当に目的とするならば、最適な時期はいつであろうか?

 現在の入試制度のもとでは、3月に試験結果が発表となる。そこで晴れて合格となって初めて、具体的に4月以降どうするかを考えることになる。そのような短期間に熟慮の上の選択ができるとは思えない。しかもその間は、高校生でもなく大学生でもないという状態におかれることになる。つまり何かの場合に責任をもって援助・助言・指導をしてあげられる機関が存在しない。

 このような理由かどうかは別として、一部の大学では、春入学は維持するが講義は秋からという可能性が検討されているらしい。入試時期を遅らせることができないならば、少なくともそのほうがずっと合理的だ。入学後、講義開始までの学生に対してその大学が責任をもつという姿勢が明確だからである。

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筆者

須藤靖

須藤靖(すとう・やすし) 東京大学教授(宇宙物理学)

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授。1958年高知県安芸市生まれ。主な研究分野は観測的宇宙論と太陽系外惑星。著書に、『人生一般二相対論』(東京大学出版会)、『一般相対論入門』(日本評論社)、『この空のかなた』(亜紀書房)、『情けは宇宙のためならず』(毎日新聞社)、『不自然な宇宙』(講談社ブルーバックス)などがある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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