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組織替えだけで問題は解決しない-原子力規制庁をめぐって

吉田文和 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

原子力規制庁は独立性の高い委員会か、あるいは環境省の外局にすべきか。

 当初、発足予定であった原子力規制庁は、環境省の外局という位置づけで、経済産業省のもとにある現原子力安全・保安院から400-500人、内閣府の原子力安全委員会(事務方)70人、文部科学省の原子力安全課45人を統合して、550人の人員を予定していた。実質的には、経済産業省傘下の原子力安全・保安院を環境省の外局に移す組織替えと見なされている。

 しかし、根本的な課題は、これまでの原子力関係の安全規制にどこに問題があったかを明らかにし、それに基づいて法規規制の改正と規制体制と水準の抜本的改革を図る必要がある。

 国会の事故調査委員会で斑目原子力安全委員長が証言しているように(2012年2月15日)、従来の安全審査指針類に瑕疵があり、立地審査指針の基準も抜本的な見直しが必要であり、炉心溶融などの過酷事故の規制強化が必要なことは明白である。

 規制体制も、能力と責任が不十分であり、結果として福島の事故を防ぐことができなかった。それに対して、原子力規制機関のあり方として、アメリカのNRC(原子力規制委員会)のような、独立性の高い委員会方式か、あるいはドイツのように環境省のもとにおくのか、という組織上の位置づけが主に問題にされている。しかしまず原子力規制の水準と能力の問題を基礎として検討すべきである。

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