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コメのセシウム汚染、思ったより複雑だった

米山正寛 朝日新聞記者(科学医療部)

 昨年の秋、放射性セシウムの濃度が暫定規制値(1kgあたり500ベクレル)を超える米が、収穫期を過ぎてから福島県内で次々と見つかり、大問題となった。昨春の作付け前に農林水産省は、放射性セシウムが水田土壌から米へと移る移行係数を最大0.1と見積もり、土壌1kgあたり5000ベクレル以上の放射性セシウムで汚染された水田での作付けを禁ずるなどの対策をとっていた。そんなこともあって、農水省や研究者たちは「なぜ予想できなかったのか」「なぜ十分な対策をとれなかったのか」と責めたてられた。その後の検証から見えてきたのは、放射性セシウムの移行に水や有機物が絡んだ、水田における物質循環の複雑さだった。
拡大コメから高濃度のセシウムが見つかった水田=2011年9月、福島県内で木村俊介撮影

 500ベクレル超の米が最初に報告されたのは9月23日で、福島県二本松市小浜地区の水田だった。その後、福島市や伊達市でも見つかった。これらの地区の水田については、これまで(1)セシウムを固定させる粘土質が少ない砂質土壌だった(2)山あいで周りからセシウムが流れ込んだ(3)土壌がカリウム不足のため化学的に性質の似たセシウムをイネが吸収しやすかった――などの理由で、米への高濃度のセシウム蓄積が説明されてきた。中央農業総合研究センター(茨城県つくば市)などは、放射性セシウムで汚染された水田でも、カリウムの投入量を増やせば、米へのセシウム移行を大幅に減らせる場合があるという実験結果を発表している。

 ただ、米の濃度は500ベクレルに達しなかったものの、最大0.1という農水省の見積もりを超えた高い移行係数を示した水田も見つかっている。このため、はたして(1)~(3)だけで十分な説明ができているのか、イネのセシウム吸収にまだ気づいていないしくみがかかわっているのではないか、といった疑問はぬぐいきれない。 ・・・ログインして読む
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筆者

米山正寛

米山正寛(よねやま・まさひろ) 朝日新聞記者(科学医療部)

朝日新聞科学医療部記者。「科学朝日」や「サイアス」の編集部員、公益財団法人森林文化協会事務局長補佐兼「グリーン・パワー」編集長などを務め、2018年4月から再び朝日新聞の科学記者に。ナチュラリストを夢見ながら、とくに自然史科学と農林水産技術に関心を寄せて取材活動を続けている。

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