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アフリカ熱帯林で双方向の科学外交を実らす

山極寿一 京都大学総長、ゴリラ研究者

 3月末に、アフリカ大陸西岸のガボンへ行ってきた。私たちが5年計画で実施している地球規模課題対応国際科学技術協力SATREPSのプロジェクトの前半が終了したので、その中間評価を受けに赴いたのである。

 このプロジェクトを助成してくれている日本の国際協力機構JICAと科学技術振興機構JSTのメンバーとガボンの教育省、大統領府、科学技術大学の代表者が一堂に会し、これまで私たちが実施した内容について詳しく検討した。プロジェクトの課題は「野生生物と人間の共生を通じた熱帯林の生物多様性保全」で、アフリカで最も生物多様性の高い森林の一つであるガボンのムカラバ・ドウドウ国立公園の生態系の特徴を明らかにし、それを持続的に利用するエコツーリズムの進展を図ることを目標に掲げている。5年の間にガボンの研究者を育て、地元住民の積極的な参加のもとに持続的発展のモデルをつくることも目的の一つである。

メーデーに、おそろいのプロジェクトのシャツを着て集まったガボンと日本のメンバーたち(2010年5月1日撮影)

 世界に大きな熱帯林はアジア、アフリカ、中南米にあるが、生態系の特徴はそれぞれ異なっている。アフリカの熱帯林は雨量が少なく、広大なサバンナや砂漠を周囲にもち、多種の大型哺乳類が生息することに特徴づけられる。熱帯林に居住する哺乳類の中ではゾウと霊長類の生物体量が大きい。彼らは多様な果実を食べてその種子を森林内に広く散布し、森林を維持する役割を果たしている。だから、アフリカの熱帯林の生態系を理解するためには、霊長類の生態や行動を詳しく調べる必要があるのだ。

 幸い、霊長類学は日本で発祥した学問であり、日本の研究者はもう60年以上も世界各地でさまざまな霊長類を研究している。

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