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この春から高校で使われる生物の教科書が大きく変わる。そんな記事が新聞の片隅に載ったのは、やや遅く咲き誇った東京の桜が、風音をかわしながら散り始めた頃のことだった。

 生物教育関係者なら、文部科学省が学校教育で教えるべき内容を定める「学習指導要領」はすでに告示されていたので、大まかな内容は一昨年の桜の季節にはわかっていたのだが、しかし実際に教科書を見るまでどんな感じに変わるのか、どんな教え方に変わるのか、その詳しい変化の様相までを知悉していたわけではなかった。

 生物と言えば必ず登場したメンデルも、新しい教科書ではその扱いは大きく変わり、出番はがっくりと減る。ただ、メンデルの残した業績は重要なものであることに変わりなく、教科書からその記述が無くなるわけではない。

 なぜ高校の教科書からメンデルの記述が減るのかといえば、メンデルの遺伝の法則と言えば「優性の法則」「分離の法則」「独立の法則」だが、分離の法則はすでに中学校理科第二分野で学習するし、優性の法則は現在では「法則」として扱うのは適切ではないしと、高校で敢えてメンデルを全面に出す意義が薄れてきているということもあるが、DNAに関する知見が爆発的に蓄積し、DNAから遺伝を説明した方が現実的だということも大きな理由である。

 ただここで、一つ気になることがあった。件(くだん)の新聞記事に、「メンデル→DNA 主役交代」という文字が大きく躍っていたことだ。

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筆者

武村政春

武村政春(たけむら・まさはる) 東京理科大学准教授(生物教育学・分子生物学)

東京理科大学大学院科学教育研究科准教授。1969年三重県生まれ。1998年名古屋大学大学院医学研究科博士課程修了。博士(医学)。名古屋大、三重大の助手等を経て現職。専門は生物教育学、分子生物学、細胞進化学。著書に「レプリカ~文化と進化の複製博物館」(工作舎)など多数。【2015年10月WEBRONZA退任】

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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