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 もう一つのフレーム問題は、停電にかかわるものである。

 4月23日付の論考でも取り上げたように、若狭原発群がフル稼働状態で、若狭湾一帯に強震が襲い、全機が一斉に緊急炉心停止(スクラム)したとすると、最悪の場合は主要施設のダメージを伴う広域停電が発生し、原発への交流電源の供給が長期間にわたって断たれる事態が予想される。

 この点は、大飯原発3、4号機のストレステスト1次評価が出た後、大阪府と市が情報開示を求めて、関西電力に提出した質問にも取り上げられている。

 「若狭湾近海の断層を震源地とする地震のシナリオについては幾つか考慮されていますが、その中で、敦賀、美浜、大飯、高浜の全原子力発電所を全て『地震加速度大』のスクラム信号によって停止させてしまう可能性のある規模のあるものは有りますか。そのような大規模停電が発生した場合の、各原子力発電所における外部電源復旧までの時間は、最大どの位と評価されますか」

 その回答が関西電力からなされている。これは、回答書(「ご質問への回答」4月20日)の回答部分の1ページ目にあり、関連質問に関する回答も123ページ目にある。

 そこには、外部電源系統の多重化が十分になされていると説明されており、とくに原発に電力を供給する変電所が機能しない場合でも、別系統から電力供給が受けられるということが示されている。

 また、123ページには、このような事態においても、送電系統の機能喪失が起こらないように対応できると記述してある。著者は、送電システムの頑健性に関する専門家ではないのでここで記述されている対策が十分なものであるかの詳細はわからないが、少なくとも一定の対応がとられるだろうということは読み取れる。

 しかし、この回答に書かれていることは、ある意味で一般論であり、一斉スクラムという具体的な事象を前提とした話ではない。実際、一斉スクラムを前提とするシミュレーションはなされていない。

 そこで、復旧時間は、阪神淡路大震災のときに被災地域で起こった停電が、どのくらいで回復したかの実績を示し、数日から1週間程度で復旧する、と記されている。確かに、阪神淡路の時には、300万世帯という大規模な停電が起こった。あの状況下での復旧は大変な作業であったと思う。

 しかし、想定される事態は、一斉スクラムと地震並びに津波による被害を伴った大規模停電における復旧である。このシナリオでのシミュレーションは、ぜひしっかりとおこなっていただきたいと思う。

 原発自体のリスク評価は詳細であるが、その周辺にあって事態の推移に大きな影響を及ぼす可能性のある外部要因についてのリスク評価は、それほど緻密ではない印象である。また、事態がうまくいかないとすると、何がその要因になるかについてのより詳細な検討があってもよいと思う。 ・・・ログインして読む
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筆者

北野宏明

北野宏明(きたの・ひろあき) ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長

ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長兼所長。1984年国際基督教大学教養学部理学科卒業後、日本電気に入社。88年米カーネギー・メロン大学客員研究員。91年、京都大学で博士号(工学)を取得。1993年ソニーコンピュータサイエンス研究所入社、犬型ロボットAIBOなどの開発にかかわった。2008年に現職。NPO法人システム・バイオロジー研究機構会長を兼務。Computers and Thought Award (1993)、ネイチャーメンター賞中堅キャリア賞(2009)などを受賞している。

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