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北海道から原発ゼロで乗り切ろう

吉田文和

吉田文和 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

5月5日に北海道電力泊原子力発電所3号機が停止し、日本はいったん、原発ゼロの状態になる。原発ゼロでこの夏を乗り切ることができるのか。そこで、全国で今夏の電力需給を検討する政府の「電力需給検討委員会」が開催され(4月23日)、電力会社の需給見通しに基づく全国見通しが公表された。

 それによれば、2010年並みの猛暑の場合、供給力が最大需要を下回るのは、北海道、関西、九州の3電力で、関西は16.3%と大幅な不足となる一方、東北電力は2.9%、東京電力は4.5%の余剰が見込まれるという。

 とくに、北海道は節電しても8月は、需要に対して3.1%不足するとの試算である。北海道電力は、「今夏の需給見通しについて」(4月23日)を公表し、「泊発電所1号機、2号機の再起動がないとした場合、今夏の供給力は、現在対応中の方策が実現した場合でも480万kW程度にとどまり、猛暑だった1昨年の最大電力を想定した場合、供給予備力が20万kW程度マイナスになる見通し」であるので、「泊発電所1、2号機の早期再起動について、ご理解いただきますようお願いいたします」としている。

 まず、第1に指摘しなければならないのは、電力供給の問題と原子力発電所の再稼働問題をいったん切り離す必要があるということである。需給が厳しい関西電力は16%の不足が見込まれるというので、それを根拠に大飯原発3、4号機の再稼働問題が起きているが、たとえ大飯原発3、4号機が再稼働しても8%の不足になるという計算も出されている。

 したがって、原発の再稼働は、この問題の根本的解決にならず、かえってリスクを高めるという世論と不安が当然のごとく起きている。福島の事故から1年以上たっても、事故調査・検証委員会の報告も公表されず、独立の原子力規制庁もできず、新しい規制と基準も実施されていない。事故を起こした福島第1原発では、かろうじて設置していたベント装置と免震対策本部もないままに、「即席の基準」で、その他の原発も再稼働というのは許されないという世論は強い。北海道においても、泊原発周辺の活断層問題の再評価が必要であり、避難計画、地元の範囲の見直しなども行われていない。また、停止しても、使用済み核燃料の保管問題がリスクとなるので、対策が必要である。

 第2の課題は、北海道の場合、冬(夕方)に電力需要のピークが来るので、原発からの電力がない場合、それにどう対処するかがより重要であり、「本丸は冬」なのである。そのために、北海道電力も苫東厚真火力発電所4号機(70万kW)の補修を、冬に入る前までに終える計画であるが、北海道電力の今回の需給見通しでは、2010年の夏の猛暑の場合、485万kW程度の供給力にとどまり、3%程度の20万kW不足するという予測が出されている。

 しかし、じっさい猛暑とされた2010年夏の実績を精査すると、需要が485万kWを超えたのは、合計48時間であった。この48時間のピーク電力を賄うために、はたして原発の再稼働が是非、必要であるというのであろうか。そもそも2011年の北海道電力の節電率は2010年と比べ4%にとどまり、東北電力の節電率20%、東京電力の節電率18%と比べ大きな差が見られる。北海道電力の場合、昨年から今年にかけて、本州に60万kWを送電していたので、稼働していた泊原発3号機(90万kW)は実質的には本州向けに機能していたと見られる。

 したがって、北海道でも、本州なみの節電対策を取れば、この夏はもちろん、「本丸の冬」に備えた原発ゼロ・シナリオが可能となる。「スマートな節電」対策としては、ISEP(環境エネルギー政策研究所)が提案しているように、以下の政策を総合的に行うことである。

(1)需給調整契約:ピーク時など需給が逼迫した場合に瞬時切断、あるいは事前通告により切断する契約。

(2)デマンドレスポンス:時間別使用電力を検討できるメーターが設置された需要家に対して開始する。時間別料金メニューや、ピークシフトを行った際のリベートメニューの導入。

(3)ピーク電力料金:ピーク時間帯に料金を上げて節電およびピークシフトを促す。

(4)節電への割引:北電から提案されている。

 他方で、冬場の供給力増加のために、追加対策として以下の政策がある。

(1) 自家発電追加

(2) 他社融通追加

(3) 再生可能エネルギー

(4) 他地域電力会社への切り替え

 今から、冬に備えた本格的な準備をすることである。

 第3に、北海道は20年前までは原子力発電所はなく、原子力発電所ができてから、電力需要が急速に伸びてきたのである。原発は夜間に電力が余剰になるので、「オール電化」がすすめられ、電気暖房も増えた。トイレシャワーや、IT家電、自販機も普及した。こうした電気に依存した日常生活の見直しを行うチャンスであり、節電できれば、電気代の節約になるのはいうまでもない。

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筆者

吉田文和

吉田文和(よしだ・ふみかず) 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

1950年生まれ、兵庫県出身、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。北海道大学大学院経済学研究科教授を経て2015年から現職。北大名誉教授。専門は、環境経済学、産業技術論、主著『ハイテク汚染』岩波新書、『環境経済学講義』岩波書店、最近は低炭素経済と再生可能エネルギーの普及に関心を持つ。札幌郊外の野幌原始林の近くに住み、自然観察と散歩を趣味とする。

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