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秋入学は国際化に逆効果かもしれない

本位田真一

本位田真一 本位田真一(国立情報学研究所副所長/計算機科学)

秋入学に関して様々な議論が巻き起こっている。その良し悪しに関しては、いろいろな意見があろう。それぞれの立場で大いに議論すべきだと考える。

 私の研究室には大学院生しかいないが、国内の学生が4月入学、海外からの留学生は10月入学というパターンが定着している。研究室内には、1年間の時間の流れが存在する。たとえば、4月入学の場合には、修了年度の秋が深まってくると、それまでののんびりした研究室内の雰囲気が一転する。論文提出の時期が迫ってくるからである。普段は笑い声が絶えない後輩たちも、先輩たちに気を遣い、静寂な雰囲気になり、論文提出時期の年明けの1月末まで、研究室内は心地よい緊張感がみなぎる。論文執筆に余念のない学生同士が見えない絆で結ばれ、一体感を持ちながら無言のうちにお互いに刺激し合う姿は見ていて気持ちのよいものである。同様に、10月入学生の場合は春になると皆、卒業に向けて緊張し始める。しかしながら、年に2回、修了時期があるのは、研究室運営の立場では微妙にストレスがたまる。したがって、入学時期が統一され、1年間の流れを研究室内で共有できるという点では、私は秋入学に賛成である。

 しかし、全面的に賛成できない思いもある。秋入学のメリットの一つとして、国際化があげられている。入学時期を海外に合わせることで、これまで以上に多くの留学生を受け入れることができるからである。この点に関して私は一つの懸念を持つ。その懸念について、情報系の事例を元に述べてみたい。

 情報系の学部教育の分野では、「ACMカリキュラム」という国際標準カリキュラムがある。これは、

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