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東大でカブリ数物連携宇宙研究機構がスタートする意味

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

米カブリ財団から寄付を受けた東京大学数物連携宇宙研究機構が「東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構」と新しい名前に変わったことを祝う式典が10日、東大柏キャンパスの同機構で催された。文部科学省の世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)に採択され、2007年から活動を始めた同機構は、1964年生まれの若きリーダー村山斉さんに率いられ、閉鎖的な日本の学術界に次々と「世界の常識」を持ち込んでいる。
記念式典であいさつするフレッド・カブリ氏

 式典には、カブリ財団創設者のフレッド・カブリ氏や財団理事長のロバート・コーン氏、スタンフォード大学のカブリ素粒子天体物理学宇宙論研究所のロジャー・ブランドフォード所長らが参加、「カブリ」の冠がつく16番目の研究所の誕生を祝った。

 カブリ氏はノルウェーで物理を学び、米国へ渡って飛行機や自動車で使うセンサーを開発・販売して大成功を収めた。会社の株を売却して2000年にカブリ財団を設立。米国科学アカデミーや英国ロイヤル・ソサエティ(王立協会)などの学術組織を支援する一方、宇宙物理、ナノサイエンス、脳科学、理論物理の4分野の有力な研究所に基金を寄付してきた。世界科学ジャーナリスト連盟を通じて、科学ジャーナリストの支援もしている。

 有力な研究所はいずれも政府や大学当局などから資金を得ている。カブリ財団の基金の良さは、使い道に制限がなく、研究所の判断で自由に使える点だ。基礎科学の進展は自由な研究から生まれる、というカブリ氏の信念があるからで、唯一の条件が研究所の名称にカブリの冠をつけること。そうやって、世界の名だたる大学に次々とカブリ研究所を増やしてきた。

 宇宙物理分野では、

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