2012年05月16日
(1)中立性の確立
(2)透明性の確保
(3)福島原発事故を踏まえた安全性の実現
(4)緊急性の証明
(5)中長期的な見通しの提示
(6)事故の場合の対応の確立
(7)福島原発事故被害者の徹底救済と福井県に対する配慮について
いずれも、当然の提案であるが、福島の事故を踏まえたこのような提案は国際的にもすでに提起されているのである。
国内に5基の原発を抱え、40%の原発依存度のスイス連邦は、福島の事故を受けて、20年後の2034年ころを目途にした脱原発、新設なしを決定した。そのスイス連邦の原子力安全検査局(ENSI)は、福島の事故を深刻に受けとめ、あと20年にわたり、原発を運転するうえでの39の教訓を詳細に調査のうえ、約半年後に公表している(Lessons Fukushima 11032011,2011年10月29日、原文はドイツ語)。1年たっても、政府と国会の正式な事故調査委員会の報告もだされていない日本と比べて、その対応の早さは注目に値し、その報告内容も大変重要である。とくに、日本でも指摘されている個々の設備や対応の問題点にとどまらず、それをもたらした構造的要因を電力会社と政府の制度と規制の在り方にまでさかのぼって解明しようとしている点は、当事者の日本の分析よりも進んでいる。
以下にスイスが学んだ39の教訓を紹介する。
(1) 学習する組織を発展させない欠陥(国内及び国際的事故の経験が十分に考察されていない)
(2) 貧弱な企業文化(事業者は、偽造と隠蔽の企業文化のもとにあるように見える)
(3) 経済的配慮から安全を制限した(企業は2010年の年報においてコスト節約プログラムで設備検査の回数を減らしたとのべている)
(4) 保安院が経済産業省に依存している欠陥(保安院が経済産業省のもとにあり、利益相反であり、決定構造の不透明性がある)
(5) 全体システムにおける検査の構造的欠陥(検査の役割と責任が不明確)
(6) 不十分な検査の深さ(検査機関は、設備の建設と運転に当たり、地震と津波などの安全を表面的にしか検査しなかったという大きな怠慢)
(7) 企業の安全文化の欠如(安全検査がなおざりにされ、偽造された、欠陥のあるメンテナンス管理)
(8) 意思決定の欠陥(企業、政府、検査機関が不十分な意思疎通で決定が遅れた)
(9) 非常事態に対する不十分な準備(日本では、非常事態に対する準備がボランタリーベースであった。既存の緊急対策計画は多くの欠陥。外部の非常対策が節約され、全体のインフラが破壊された)
(10)スタッフへの過大な要求(過酷事故を緩和する手段が実施されず、長期に放出)
(11)規制上の欠陥(過酷事故への対策が法律に基づいて適切に規制されなかった)
(12)非常事態計画の遅れ(地域の危機管理が準備されず、関係者の連絡なし)
(13)不十分な放射線防護手段
(14)住民に対する不十分な情報
(15)集団主義の危険性(リスクを過小評価し、警告と事実を無視し、集団主義、自己満足、自信過剰に陥っていた)
(16)過酷な作業環境
(17)放射能汚染を無視
(18)過酷事故への不十分な準備
(19)建物構造の不備
(20)外部の安全監視にコミットできない
(21)不適切で不正確な事業者の行為
(22)非常用手段の回復の失敗
(23)電気設備の不備
(24)局部的な環境条件悪化のために、非常用手段が作動せず
(25)連絡手段の不足不備
(26)ベントの問題
(27)情報の混乱
(28)海水注入の遅れ
(29)水素爆発への予防がない
(30)非常事態に対する設備と要員の不足
(31)外部電源問題
(32)津波で重要設備の安全確保できず
(33)冷却の不足、使用済み核燃料の問題
(34)冷却水の不足
(35)ホウ素の不足
(36)事故のもとでパッシブ・システム
(37)環境監視装置の不備
(38)海水汚染
(39)環境中の放射能汚染
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