下條信輔(しもじょう・しんすけ) 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授
カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授。認知神経科学者として日米をまたにかけて活躍する。1978年東大文学部心理学科卒、マサチューセッツ工科大学でPh.D.取得。東大教養学部助教授などを経て98年から現職。著書に『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)『〈意識〉とは何だろうか』(講談社現代新書)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
すると、その後のニュースが違って見えてきた。さまざまな出来事や政治問題が、この文脈で捉え直せることに気づいたのだ。
まず、原発にまつわる他の問題がそうだ。たとえば使用済み核燃料の中間貯蔵施設の引き受け先。この問題がくすぶっているところへ、再稼働問題が起き、飛び火する格好になった。
共通するのは、ある種「たらい回し問題」だということだ。そして、どの自治体の単位でモノを考えるかが問われている。
4月中旬、大飯原発の地元、福井県の西川知事が「中間貯蔵施設を、電力消費地に置いては」と提案。松井大阪府知事や、橋下大阪市長がただちに歓迎した。「すべてを福井に押し付けるのではなく、恩恵を受けている自治体が検討するのは当然」という趣旨だ。
そもそも大飯原発は、原発の再稼働問題で焦点となってきた。
再稼働には、電力会社のストレステスト(耐性評価)1次評価→保安院の審査→原子力安全委員会の確認というステップが、必要とされた。先行する大飯3、4号機は審査と確認を終え、野田政権は「安全性の判断基準を満たす」と宣言。しかし西川知事は、「福島第一原発の事故を踏まえた『暫定的な安全基準』の提示」「福島事故の検証を進め、新しい知見が得られるたびに安全対策に反映するシステムの構築」「老朽化や地震動が事故に与えた影響を明らかにすること」などを再稼働の条件として求めてきた。
京都府、滋賀県、大阪府など電力消費側の自治体は、よりはっきりと再稼働に反対の立場だ。こういう周辺自治体の意思表明が、3.11以降に生じた大きな変化のひとつだろう。自分の問題として考えはじめた、とも言える。
そもそも