メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS
原発輸出と利他行動のことを、この欄で書いた(「原発輸出と利他行動〜どの集団を愛するか」2012年4月4日)。ヒトでも他の動物種でも、利他行動は所属する集団内に限られ、他の競争集団に対しては、むしろ敵対的な振る舞いとしてあらわれる。だからどの集団にアイデンティティを感じるかで、行為の善悪の判断も変わる。原発輸出もしかりだ。また、集団への帰属意識は教育の効果で変わるとも書いた。

 すると、その後のニュースが違って見えてきた。さまざまな出来事や政治問題が、この文脈で捉え直せることに気づいたのだ。

 まず、原発にまつわる他の問題がそうだ。たとえば使用済み核燃料の中間貯蔵施設の引き受け先。この問題がくすぶっているところへ、再稼働問題が起き、飛び火する格好になった。

 共通するのは、ある種「たらい回し問題」だということだ。そして、どの自治体の単位でモノを考えるかが問われている。

拡大記者会見する西川一誠福井県知事=2012年4月14日

 4月中旬、大飯原発の地元、福井県の西川知事が「中間貯蔵施設を、電力消費地に置いては」と提案。松井大阪府知事や、橋下大阪市長がただちに歓迎した。「すべてを福井に押し付けるのではなく、恩恵を受けている自治体が検討するのは当然」という趣旨だ。

 そもそも大飯原発は、原発の再稼働問題で焦点となってきた。

 再稼働には、電力会社のストレステスト(耐性評価)1次評価→保安院の審査→原子力安全委員会の確認というステップが、必要とされた。先行する大飯3、4号機は審査と確認を終え、野田政権は「安全性の判断基準を満たす」と宣言。しかし西川知事は、「福島第一原発の事故を踏まえた『暫定的な安全基準』の提示」「福島事故の検証を進め、新しい知見が得られるたびに安全対策に反映するシステムの構築」「老朽化や地震動が事故に与えた影響を明らかにすること」などを再稼働の条件として求めてきた。

 京都府、滋賀県、大阪府など電力消費側の自治体は、よりはっきりと再稼働に反対の立場だ。こういう周辺自治体の意思表明が、3.11以降に生じた大きな変化のひとつだろう。自分の問題として考えはじめた、とも言える。

 そもそも ・・・ログインして読む
(残り:約1209文字/本文:約2083文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

下條信輔

下條信輔(しもじょう・しんすけ) 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授。認知神経科学者として日米をまたにかけて活躍する。1978年東大文学部心理学科卒、マサチューセッツ工科大学でPh.D.取得。東大教養学部助教授などを経て98年から現職。著書に『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)『〈意識〉とは何だろうか』(講談社現代新書)など。

下條信輔の記事

もっと見る