中村多美子
2012年05月19日
天文学者であったカール・セーガンが書いたSF小説「コンタクト」(1997年映画化)でも、ひたむきな女性天文学者をねちねち疑って嫌がらせをする法律家が出てくるし、リチャード・ファインマンがチャレンジャー事故の調査をするのにも、なんだか嫌な感じのする弁護士委員長がうろうろする。マイケル・クライトンのSF小説でも、道化役や悪役は決まって弁護士だ。
というわけで、第180回国会に提出されているJAXA法(独立行政法人宇宙航空研究開発機構法)の改正について、口うるさい弁護士の視点から一言申し上げたい。
日本には3万人の弁護士がいる。この弁護士のおそらくほとんどは、いわゆるJAXA法なんていう法律があること自体知らないだろう。かく言う私も、この原稿を書くまでは、JAXAは知っていてもその根拠法令なんて読んだことはなかった。
JAXAのホームページから仕入れたにわか知識によると、JAXAとは「2003年10月、宇宙科学研究所(ISAS)、航空宇宙技術研究所(NAL)、宇宙開発事業団(NASDA)が1つになり、宇宙航空分野の基礎研究から開発・利用に至るまで一貫して行うことのできる機関」であり、「宇宙開発利用と航空研究開発は、国の政策目標を達成していくための手段であり、問題解決に貢献することはJAXAにとって重要な使命です。JAXAはこの自らの使命を実現するため、2005年4月に『JAXA長期ビジョン“JAXA2025”』を提案しました。 JAXAは、『空へ挑み、宇宙を拓く』 というコーポレートメッセージのもと、人類の平和と幸福のために役立てるよう、宇宙・航空が持つ大きな可能性を追求し、さまざまな研究開発に挑みます」というような組織であるらしい。
確かに、小惑星探査機「はやぶさ」の名前とともに広く知られるようになったJAXAには、夢とロマンが詰まっているようなイメージがある。
国会に提出されているJAXA法改正案は、内閣官房のホームページで見ることができる。
それにしても、「内閣府設置法等の一部を改正する法律案」なんていうタイトルの法律案に、そもそもJAXA法改正に関する部分が含まれているなんてちょっとやそっとじゃ気がつかない。しかも、何のために改正するんだかも、内閣官房の情報だけではすぐには飲み込めない。自分が直接関係するわけでもない、そんな細かい法律の改正にまでは、弁護士だっていちいち気が回らない(弁護士は法律を全部知っていると思っている人が多いようだが、そんなことは全くない)。
けれども、ここに立憲主義国家ニホンの意外な落とし穴が潜んでいると思う。
憲法改正や、民法改正など、国民生活を広くカバーするような法改正は、確かに社会の大議論を呼ぶ。それに対し、それらの法律の下位にある、こまごました法令の改正などは、まあ、それより上位の法についてしっかり議論していれば大丈夫と思われるのか、あまり議論されない。しかし、
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