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ロボットはW杯を制覇できるか?〈下〉

世代を超えたプロジェクトへ

北野宏明 ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長

 ロボットが、サッカーでも人間の世界トップ級選手に勝つ、というRoboCup最終目標の実現時期は、2050年である。そうなると創設者や現在活発に活動している研究者は、現役を引退していることになる。RoboCupの成功には、単に研究をすすめるだけではなく、次世代の研究者やエンジニアを育成することが必須である。そこで我々は、RoboCupのスタート直後から、教育を目的としたRoboCupJuniorを立ち上げた。RoboCupJuniorは、小学生から高校生をカバーし、サッカー、レスキュー、ダンスのカテゴリーに分かれている。

 各国の国内委員会が、地区予選、国内大会を行って、その上位チームが、国際大会への参加権を獲得する。毎年、RoboCupとともに開かれるRoboCupJuniorの国際大会には、世界35カ国から数千人の参加者が集まる大きなイベントとなっている。各国予選は、総計で数十万人が参加していると推定されるので、世界大会への参加権の枠を拡大すれば、イベントの規模は数万人規模にもあるのだが、日程ときめ細かなケアをするという観点、さらに、研究者を中心としたRoboCupのサッカーリーグやレスキューと同じ会場で同時開催することを重視しているため、現在の規模に押さえている。

 このRoboCupJuniorに参加する小中学生、高校生が、研究者と同じ時間を共有し、ルールは違うものの同じ課題にチャレンジするということは、子供たちが自分も大きなチャレンジの一部であるという参加意識を醸成するという側面と、科学・技術をより自分の問題として捉えてもらうという側面から非常に重要であると思っている。

 もちろんRoboCupJuniorは、教育活動ではあるのだが、上から目線の教育ではなく、彼らは、同じ目標にチャレンジするRoboCupプロジェクトのメンバーであると考えている。実際に、RoboCupJuniorに参加したことがきっかけでロボット工学の研究者になった人も出始めている。

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筆者

北野宏明

北野宏明(きたの・ひろあき) ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長

ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長兼所長。1984年国際基督教大学教養学部理学科卒業後、日本電気に入社。88年米カーネギー・メロン大学客員研究員。91年、京都大学で博士号(工学)を取得。1993年ソニーコンピュータサイエンス研究所入社、犬型ロボットAIBOなどの開発にかかわった。2008年に現職。NPO法人システム・バイオロジー研究機構会長を兼務。Computers and Thought Award (1993)、ネイチャーメンター賞中堅キャリア賞(2009)などを受賞している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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