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海運業の歴史からクラウド業界の今後を占う

本位田真一 本位田真一(国立情報学研究所副所長/計算機科学)

米ナスダック市場に5月18日に上場したSNS(交流サイト)最大手のfacebookの時価総額が話題である。検索大手のgoogleもSNSサービスgoogle+に力を入れており、インターネット市場での巨人たちの競争はますます熾烈になっている。

 Microsoftも既存のオペレーティングシステムやオフィスソフト分野での力を梃子(てこ)に競争に参加している。これらの企業は、世界各地に巨大データセンターの建設を進めて、"規模の経済"も味方につけて勝ち抜こうとしている。今や、ネットワーク経由でのサービス提供をビジネスの柱とする「クラウドコンピューティング」が主戦場なのである。

 オンライン販売のamazonは中心的プレーヤーの一つで、彼らは本のオンライン販売より前に、データセンター内のコンピューター資源(仮想マシンと呼ばれる)の販売もビジネス化した。時間単位で仮想マシンがセルフサービスでレンタルできるAmazonWeb Services(AWS)というビジネスがそれだ。コンピューター資源自体をサービス提供することは、クラウドコンピューティングの基幹事業であり、最重要サービスの一つだ。この意味で、amazonは上のfacebook, google, Microsoft と並んでクラウドコンピューティング時代の巨人として名を連ねている。

 さて、これから先のクラウド業界の競争地図はどうなるのだろうか? 規模の経済ということを考えると、これら巨人たちによる寡占化が進むのではないかと思われるかもしれない。このことを考える上で参考になる歴史上の出来事がある。

 それは、海運業界のコンテナ化である。クラウドの本質の一つは、仮想化技術を活用し、IT資源(ハードウェア、ソフトウェア)をファイルとして取り扱う「コンテナ化」であり、海運の世界では約50年前に始まったコンテナ化物流の革命がIT業界で今起こっていると考えることができないだろうか? 歴史に学び、一つの将来像を想像してみたい。

 積み荷を個別に運んでいる時代から、それをコンテナに入れて運ぶ時代へ、そして

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