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ロボットはW杯を制覇できるか?〈番外編〉

Crowd Science ProjectとしてのRoboCup

北野宏明 ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長

 これまで3回にわたってRoboCupの活動と産業展開などについて書いてきたが、今回は、番外編としてそのマネジメントを見て行きたい。

 RoboCup(スイスに非営利法人The RoboCup Federationとして登記されている)を設立するにあたって、私は、FIFA World Cup、F-1、アメリカズカップ、オリンピックなど、いろいろな国際的なスポーツ大会のビジネスモデルや運営方法を研究した。さらに、NASAのアポロ計画、ヒトゲノム計画など大きな科学技術プロジェクトの運営や立案過程も詳細に調べた。もちろん、それぞれの運営形態は、歴史的経緯や置かれた状況によって違うので、単にこれらのプロジェクトやイベントの運営方法にRoboCupを当てはめることはできないが、参考にすることはできる。

 いろいろな検討の結果、たどり着いたのが現在の形態で、スポーツイベントといわゆるクラウド型研究開発の融合である。ここでの「クラウド」は、CrowdであってCloudではない。

 RoboCupは、50年以上にわたって世界中の研究者などを巻き込んで進められる全世界分散協調型の超長期プロジェクトである。毎年のRoboCup大会では、ロボットのサッカーチーム同士の試合が繰り広げられ、世界チャンピオンが決まるので、いわゆるロボコンと間違えられることが多い。しかし、この大会は、論文で書いていることが本当に機能するのか、どの方法がより優れているのか、などを逃げ場のない環境で確かめる実証試験の場であるととらえている。

 同時に、試合形式の実証試験の翌日は、試合に参加したロボットチームに搭載された技術をめぐる研究発表がシンポジウムのかたちで行われ、ここで発表された論文は毎年、書籍として出版されている。これらのイベントをまとめてRoboCup世界大会が成り立っている。さらに、開発されたソフトウエアなどが多くの場合は公開されるという伝統も根づいている。これらの情報開示は、研究を加速するという観点から非常に重要である。この情報公開のカルチャーがあるので、前年の優勝チームに対抗できるレベルのチームでないと翌年のエントリーも難しくなる。

 単なる競技会であるならば、手の内は明かさない方がよい。しかし、RoboCupはプロジェクトであって、全体の技術的進展が加速されなければ、そのなかで勝ち負けを云々しても意味がない。

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筆者

北野宏明

北野宏明(きたの・ひろあき) ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長

ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長兼所長。1984年国際基督教大学教養学部理学科卒業後、日本電気に入社。88年米カーネギー・メロン大学客員研究員。91年、京都大学で博士号(工学)を取得。1993年ソニーコンピュータサイエンス研究所入社、犬型ロボットAIBOなどの開発にかかわった。2008年に現職。NPO法人システム・バイオロジー研究機構会長を兼務。Computers and Thought Award (1993)、ネイチャーメンター賞中堅キャリア賞(2009)などを受賞している。

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