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国別に差異化した目標を設ける京都議定書の考え方の下、わが国は、前回に述べたように、基準年である1990年頃にあった欧米に対する環境対策上の優れた実績を反映して、比較的に緩い削減目標を掲げることに成功した。そうして20年を経ってみると、前回見たように、供給エネルギーの低炭素化については、欧州主要国に横一線に並ばれてしまった。太陽光発電や風力発電の設備容量では、はっきりと劣後してしまった。
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 実は、この事情は、CO2対策のもう一方の柱である省エネ面でも同様である。

 図1は、省エネに関する最もマクロな指標であるGDP(購買力平価で換算)当たりのCO2排出量である。いかに化石燃料を使わずに、稼ぐか、と、言い換えてもよい。

 この図を見ると分かるが、わが国は、1990年頃は、ドイツやイギリスに比べて、はるかに環境を汚さずに稼いでいた国であった。省エネ先進国として、他の国と同様の削減率目標に服するのは不公平だ、と主張したくなるのもうなずける。

 そして、最近はどうなっただろう。図のとおり、省エネ分野でも日本は欧州主要国に追い付かれてしまったのである。不平等条約でない京都議定書の帰結は、日本の省エネ優位の解消であった。

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 なぜ省エネ優位がなくなってしまったのか。図2は、CO2の排出量の内訳である。この内訳は、日本で慣れ親しんでいる間接排出でなく、CO2がずばりどの発生源から出されているかを見た直接排出によるパイチャートである。

 このため、発電に伴う排出量は、発電所に帰属させられていて、見慣れたグラフよりもはるかに大きい。しかし、それでも、日本での発電所の占める割合、そして、一般家庭の占める割合は、欧州主要国に比べ、決して大きくはない。むしろ多いのは、製造業からのものである。製造業におけるエネルギー消費量の削減が日本においては、まずは重要である(ちなみに、ドイツや米国では、住宅部門のシェアが相対的に大きく、英国では、運輸部門の排出割合が大きい)。

 そこで、この製造業での省エネの進展を、欧州主要国などと比べてみよう。図3は、日本の主要な競争相手との間での、製造業+建設業という広い範疇での省エネの進展を比較したものである。IEA(国際エネルギー機関)のエネルギーバランス表によって、それぞれの自国通貨建ての製造業等の実質付加価値当たりでの、これら産業分野のCO2排出量について、2000年以降の相対的な変化を見たところ、米国やイギリスは、ほぼ5割に及ぶ省エネ(あるいは炭素生産性の向上)を果たしている一方、日本の改善は、その半分程度であった。

図3拡大

 日本においては、家庭部門の排出増加が揶揄されることが多い。それももちろん問題だが、日本において競争相手に比較して大きな排出シェアを占めている製造業部門において省エネ対策が相対的に見て遅れていることが、日本が、かつての省エネ優位を失ったことの大きな原因と思われる。

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筆者

小林光

小林光(こばやし・ひかる) 慶応義塾大学特任教授(環境経済政策)

慶応義塾大学特任教授(環境経済政策)。工学博士。1949年生まれ、慶応義塾大学経済学部卒業。環境庁(省)では、環境と経済、地球温暖化などの課題を幅広く担当。1997年の京都会議(COP3)の日本誘致のほか、温暖化の国際交渉、環境税の創設などを進めた。環境事務次官(2009~11年)時代には水俣病患者団体との和解に力を注ぐ。自然エネルギーをふんだんに利用したエコハウスを自宅にしていることで有名。趣味は蝶の観察。

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