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大飯原発の再稼働問題(続)-泊原発見学記

吉田文和 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

大飯原発第3号機、4号機の再稼働が予定されているなかで、これに続いて再稼働が検討されているのは、ストレステストの1次評価を終えた四国電力伊方原発3号機と、北海道電力泊原発1号機、2号機である、と報道されている(日経6月9日朝刊)。

 原発の再稼働は、電力不足の問題とは別であり、1にも2にも安全性の確保が大前提である。しかしながら、福島の事故に関する政府と国会の調査報告書が正式に出されていないにもかかわらず、政府は事故を防ぐことができず、信頼を失った原子力安全保安院がまとめた30項目の「技術的知見」なるものの一部を使って即席の「安全基準」をつくり、「安全は確保された」として、再稼働に向かっている。

 しかも、福島の事故の経験を踏まえた、事故になった場合の避難計画、防災計画、公衆の被ばくを防ぐ対策強化と見直しは、ほとんど立てられていない。これでは、安全装置なしで落下傘降下しろというに等しい、国民を危険にさらす冒険である。

停止中の北海道電力・泊原発

 北海道においても、冬の夕方のピーク電力を賄うためには、10%の電力が不足であるとされ、泊原発の再稼働を北海道電力は準備、要請している。泊原発の再稼働問題も基本的には、大飯原発の再稼働と同じ問題を抱えている。原子力の型もPWR(加圧水型炉)であり、第1号機、第2号機は運転開始から20年以上経過している。北海道電力は、福島の事故を受けて、以下のような対策をとるとしている。

(1) 発電所の外から電力を供給できるようにする(発電所外部からの電力供給信頼性向上)。2015年を目途。

(2) 移動発電機車を追加配備する。2012年を目途。

(3) 電動の海水ポンプと代替海水取水ポンプを確保する。2012年を目途。

(4) 電気設備の浸水対策の実施。2015年を目途。

(5) 安全上重要な機器が設置されたエリアの浸水対策。2013年を目途。

(6) 防潮堤の建設。2014年を目途。

 今回、北海道電力泊原発を実際に見学して(6月6日)、福島の事故を受けての対策を中心に問題点と課題を明らかにしておきたい。まず、発電所の構内に入り、海抜10メーターレベルの構内道路が海側にある。道路のすぐ海側下には、冷却用の海水取水口がある。3機の原発の立地は、後背地(85メートル)が迫っており、問題となっている近くの活断層による地震が起きた場合、送電線、開閉所の損傷のリスクがある。送電線は2系統あるが、開閉所は1つである。

 泊原発の安全対策は、狭い意味での電源と冷却水の確保に重点があり、とりあえず「冷温停止」にもっていくことに主眼が置かれている。大飯原発と同じように、免震重要棟は2016年3月を目途とされるが、ベント(フィルター付き)設置見通しは不明確である。

現在、海抜10メートルレベルの構内道路を16メートルに嵩上げして、防潮堤にするという計画が立てられているが、16メートルで十分な高さであるという根拠が不明確であり、外側にある防潮堤はそのままである。

 とくに、1993年の北海道西南沖地震の際の影響や対策についての情報開示が不十分である。当時、「引き潮」の影響で、冷却水が取水困難になったといわれる。現在「引き潮」対策は「原子炉停止」とされており、その後の除熱対策が不明確である。また、電源と水の確保の要となる、非常用電源確保、移動発電機車などの燃料の確保、場所、量が不十分である。

 使用済み核燃料の貯蔵プールは、原子炉建屋の隣にあるが(31メートルレベルで12メートルの深さ)、すでに1号機、2号機のプールは満杯であり、電力と耐震性の確保が課題である。再処理の見通しが立たないなかで、停止中でも、より安全な使用済み核燃料の貯蔵方法、場所(乾燥中間貯蔵)が検討されるべきである。

 福島事故の大きな教訓は、原発事故による地域防災計画が不十分であり、避けられた「住民の被ばく」があったという問題である。泊原発に関していえば、免震重要棟はなく、原発構外2キロメーターにあるオフサイト・センターの北海道原子力防災センターは海抜4メートルのレベルであり、福島級の地震と津波に耐えられる防災拠点はなきに等しい。

 しかも泊原発の主要出入り口は1つであり、それに接続する雷電国道(229号)は1つしかなく、渋滞が起きる。

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