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 前回、「人口減少社会という希望」という議論を提起したが、さらにそれを展開してみよう。

人口は減るが、やがて均衡化する

 まず、「人口減少社会という希望」といっても、私は、人口が未来永劫にわたって減少を続けるという状況を好ましいとは考えていない。というのも、一つには、現在(2011年)の1.39という合計特殊出生率(以下、出生率と略す)の水準は、子育てと仕事の両立が困難な社会、あるいはさまざまな統計に示されているように、望ましいと思う子どもの数と実際の子どもの数の間にギャップがある(ほしいだけの子どもを生み育てることが難しい)社会という意味で、つまり個人のミクロのレベルでの幸福という点で、望ましいとは言えないからだ。

 そうした意味では、子育て支援あるいは子育てと仕事の両立に(あるいはいわゆるワークライフバランスの実現に)力を入れた政策展開をしている北欧やフランスのように、出生率は2.0前後まで回復するのが望ましいだろうし、それは人口水準の均衡ないし定常人口という点からもおそらく妥当なものだろう。

 したがって、今後の人口減少とその先に関する私の基本的なイメージは次のようなものである。

 一方で、人口減少自体は今後も当分は変わらない。これは、ごく単純な事実として、出生率が今から突然急に跳ね上がることは現実には考えられないし、またかりに突然そうなったとしても、(高齢化の中で)死亡数の増加は今後も当面続くので(死亡数のピークは2039年ないし40年)、当面の人口減少という現象は変えようがないということである。

 しかし他方、上記のような考えから、出生率は徐々に回復して最終的には2.0前後(正確には、人口置換水準の2.08程度)にまで回復していくことが望ましい。したがって、その結果として、大きく言えば人口はある水準まで減って下げ止まり、その後は均衡あるいは定常人口で推移する、という展望である。

 その水準がどのくらいであるかは、当然のことながら出生率の回復の動き如何で変わってくる。それは9000万人前後でもありうるし、ドイツ並みの8000万人かも、イギリス、イタリア、フランス並みの6000万人かもしれない。ちなみに国連の人口推計では、先進諸国の出生率は2100年に向けて最終的に2.0前後に収斂するという前提で推計がなされており、これによれば日本の人口は2100年には9000万人程度で安定することになっている。

 出生率の上昇ないし回復について述べれば、私はそこでもっとも重要なのは、比喩的な言い方になるが「北風ではなく太陽」的な発想ないし対応だと考えている。 ・・・ログインして読む
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筆者

広井良典

広井良典(ひろい・よしのり) 京都大学こころの未来研究センター教授(公共政策・科学哲学)

1961年生まれ。84年東京大学教養学部卒業(科学史・科学哲学専攻)。厚生省勤務、千葉大学法政経学部教授を経て現職。この間、マサチューセッツ工科大学客員研究員。社会保障、医療、環境などをめぐる政策研究からケア、死生観などについての哲学的考察まで幅広く発信。『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書)で第9回大佛次郎論壇賞を受賞した。

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