メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

「認知症→精神科入院」の流れを変えよう

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

厚生労働省が18日、認知症の新たな対策をまとめた。初期段階での支援を充実させ、精神科病床への入院を減らしていこうとするものだ。不適切な薬物使用をなくすために薬物治療の指針も作る。介護保険ができて、認知症の人を支える態勢は少しずつ整ってきた。それでも「手に負えない状態になったら精神科病院に任す」という考え方は根強い。しかし、そもそも「手に負えない状態にしない」ことこそ医療の役割ではないのか。この発想の転換が今回の対策づくりの原動力になった。誰だって認知症になりうる。「認知症になったら最後は精神科入院」という流れは早く変えたい。

 認知症になって精神科病床に入院する人は、1996年の2.8万人から2008年の5.2万人に激増した。

「精神病床における認知症入院患者に関する調査」(厚労省新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム,2010年)の結果を一部改変

 厚労省の調査(10年)によると、自宅から入院したのは47%、精神科のない医療機関や介護施設からが41%。この中では介護施設からより病院・診療所からの入院の方が多いのが目を引く。

 認知症になると環境の変化が苦手になり、入院などで居場所が変わると大声を出したり暴力的な行動をしたりすることが珍しくない。そのために普通の病院は入院を断ったり、いったん受け入れても精神科病院に転院させたりしている。それで困り果てている家族は多い。

 今回の対策を立てた厚労省の認知症施策検討プロジェクトチームは、こうした状況を「一般病院の職員の認知症への理解や対応力の不足」から起きていると判定。一般病院での認知症対応力の向上が必要とした。

 また、精神科医療では、抗精神薬の不適切な使用法が見られ、それが長期入院をもたらしていると分析した。先進諸国では抗精神薬の悪影響について議論がなされ、ガイドラインが作られているのに、日本にはまだないため、指針を作る。

 一方で地域での介護サービスもまだまだ不十分とし、(1)地域介護の拠点である地域包括支援センター約4200カ所などに看護師や保健師、作業療法士でつくる「認知症初期集中支援チーム」を置く(2)かかりつけ医らと連携して早期診断をする「身近型認知症疾患医療センター」を今後5年間で全国300カ所に整備する、などの方針を示した。

 「認知症初期集中支援チーム」は、

・・・ログインして読む
(残り:約1069文字/本文:約1985文字)