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被災地の緑化、ただ木を植えるのではダメ

米山正寛 ナチュラリスト

 東日本大震災から1年を超えたこの春から夏にかけて、被災地の緑を蘇らせようという多くの試みが、行政レベルでも民間レベルでも活発に動き始めた。朝日新聞(東京本社版)でも「福島に松原もう一度/7県が種子提供」(4月28日夕刊1面トップ)や「森の防波堤を築こう」(6月20日夕刊2面窓欄)などと、おおむね好意的に受け止めた報道が続いている。
マツが倒れたり流れたりした海岸林=2011年7月、仙台市宮城野区

 大津波が押し寄せた青森県から千葉県までの太平洋岸で、海岸林の浸水面積は約3700ヘクタール、倒木などの被害を受けた面積は約1700ヘクタールに及んだ。

 とくに岩手、宮城、福島の3県では、大半の木が流失する甚大な被害を受けたところも多かった。公園や学校、住宅の庭、近くの里山でもたくさんの木々が失われた。火災や土砂崩れによる山林被害も相次いだ。こうした緑を取り戻したいという、地元の人々の願いは切実なものがある。

マツの種子を西日本から
 潮風に強いクロマツやアカマツが並び、白砂青松と形容されてきた各地の海岸林は約400年の歴史の中で育てられ、飛砂や風害を防ぎ、生活環境を守るうえで重要な役割を果たしてきた。今回の津波に対しても、場所によっては流速を弱めたり漂流物を捕捉したりといった効果が認められた。このため、林野庁が設けた「海岸防災林の再生に関する検討会」(座長・太田猛彦東京大学名誉教授)は、海岸林を「まちづくりの観点において多重防御の一つ」と位置づけた。

 林野庁の試算では、海岸林の再生に必要なマツの苗木は1000万本以上。しかし、東北でも広がりつつある松枯れ(マツクイムシ)に抵抗性がある苗が望まれるため、十分に調達できない県もある。福島県は県内の植栽に必要なマツの苗木を460万本とし、今年、7県から提供を受けた約65万本分の種子は抵抗性だ。

被災地の海岸で始まった植樹。山口県産マツの苗木も使われた=2012年6月、宮城県七ヶ浜町

 林業種苗法によって、一部の樹種の種子や苗木は移動が制限されている。

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