2012年07月03日
先端技術をめぐる裁判で、その科学技術の分野について全く素人の法律家は、どうやったら判断できるのか。これは原発裁判に限らない、困難な問題だ。その分野の専門家から見れば、法律家の議論は不可解なものに見えるだろう。「弁護士は全く不勉強だ」「裁判官は何もわかっていなかった」などの批判を受けることも珍しくない。とはいえ、膨大な専門的情報とそれを理解するために必要な基礎知識を法律家が蓄えるのは、至難の業だ。
川崎氏のインタビューは、この点に関する率直な悩みを吐露している。
「名古屋高裁金沢支部への異動の発令直後に(もんじゅ訴訟担当と)知らされ、『ついてないなあ』と思いました。原発訴訟を担当して喜ぶ裁判官はいないと思います。『控訴棄却』の結論がある程度予測されるのに、他の事件も通常通り処理しながら、膨大な記録を読まなければならないなど負担が大変だからです」
ほかにも、川崎氏のインタビューからは、裁判というシステムにおいて、一般にはあまり知られていない裁判官の悩みが浮かび上がってくる。
まず、裁判官は、担当する事件を選べない。裁判官は、定期的に人事異動で全国各地の裁判所に赴任する。裁判官の取り扱う事件の種類は多種多様だが、大部分はある程度類型化され、法の適用も比較的単純化されている。もんじゅ訴訟のような最先端科学技術紛争を審理するのは、日常的な業務とは言い難い。しかも、弁護士と異なり、裁判官は自ら望んで事件を担当するわけではない。ちなみに、負担の大きい訴訟を担当したからといって、裁判官の給料(俸給という)が変わるわけでもない。
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