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再生可能エネルギーの現場(上) 風力編

吉田文和 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

再生可能エネルギーの固定価格買取法(FIT)制度が7月から開始されるに当たり、自然エネルギー利用の実態について、北海道の風力とバイオマスについて調査を行い、この間の成果と課題を明らかし、FIT制度の本格的実施に当たり、解決すべき問題を指摘したい。

 現在、北海道内の風力発電機は280基、総発電出力が約29万kWである。環境省の風力資源賦存量調査によれば、現在の北海道電力の設備容量740万kWをはるかに上回る風力資源が利用可能である。地域別の既設設備は、北の宗谷岬から稚内市74基7.6万kW、日本海側の幌延町30基2.1万kW、苫前町42基5.2万kW、寿都町11基1.6万kW、せたな町8基1.3万kW、江差町40基4万kWである。また、根室市10基1.3万kWである。このうち、出力が大きいのは、民間のユーラスエナジー系の宗谷(1000kWx57)、苫前(1000kWx20)、伊達(2000kWx5)と電源開発系の苫前(1500kWx5,1650kWx14)、せたな(2000kWx6)である。町営風力は、寿都町、苫前町、せたな町、上ノ国町など、と第3セクターの幌延町、江差町である。そのうち、道南の寿都町は町営の風力発電事業で10年以上の実績をもち、収益を上げている。片岡寿都町長によれば、次のような教訓があるという。

拡大寿都町の町営風力発電所

(1)ステップバイステップ

町独自のシュミレーションで事業性を調査し、はじめの失敗(1989年)の後、「つべつの湯」で小規模実証を行い、そして3機の大型風車、プラス7機へと拡大した。

(2)財源を得るための事業性

 町は財政危機、道立病院移管問題を抱えるなかで、収益を得る風力発電事業として検討した。46億円の事業規模、1万kW以上の発電規模で、補助金をうまく使い、3年の返済猶予期間で基金をつくり活用する。年間2億円から800万円規模の一般会計繰り入れを行う。固定資産税は減っていくので頼れないし、地方交付税を減らされる。

(3)地元資源を活用する

 冬の風だけでなく、夏の風(出し風)を使う。従来は地域の障害とみなしていた風を、再生可能エネルギーとして道内で使う。自然資源なので、年ごとの変動はある。

(4)高価だが信頼性のある発電設備を選ぶ

 電力会社と日立から、高価だが信頼性のある、歯車のないギヤレスのドイツのエネルコン社の設備を紹介され、それを使い続ける。

(5) 電力会社との直接交渉の重要性、北海道の姿勢も重要

 風力設備や受け入れ枠問題で、北海道電力と直接交渉を行う。今後の課題として、送電線の設備増強、既設風力発電設備のFIT制度への継続の課題、安定化対策としての蓄電池設置問題などがある、という。

 これに対して、日本でも唯一営業運転中の洋上風力発電、道南のせたな町洋上風力発電(風海鳥)は、港から船で10分かかり、メンテナンスに手間もかかる。風は強く、平均10メーターは出て、平均設備利用率は34%である。

 売電収入は3300万円/2010年度だが、起債償還費用がそれを上回り、3400万円程度かかる。さらに修繕費用(110万円)、委託料(370万円)、損害保険料(210万円)などがかかり、年間1000万円の赤字となる。FIT制度が適用され、売電価格が15-18円/kWhとなれば、何とか、バランスが取れる状況である。ただ、今回のFITでは独自の洋上風力評価がなく、20%の設備利用率で計算し、かつ設備コストは低いという評価となっている。

 2004年以来の運転によって、評価点としては、(1)地域資源として利用、夏も「やませ」が吹く、(2)観光教育資源、(3)民間の風力発電を促進する、などの意義がある。これに対して、課題は、(1)事業性の見込みが甘い、(2)設備の出力が小さく、ギアレスなどへの対応が必要、(3)洋上風力は基礎工事に費用がかかり、かつ修理コストもかかる。

 一方、10年以上の操業を続けてきた道北の苫前町の町営3基と電源開発の苫前ウインドヴィラ(19基)で成果と課題を聞いた。共通して、いくつかの「想定外」の問題が発生している。

 第1は、風況の問題であり、設備利用率が当初の予想よりも低いことである(町営予想30%、実際20%)。事前の調査が必ずしも十分でなかった。

 第2は、設備と発電機がよく故障し、修理や入れ替えが必要となり、クレーン作業も伴ってコスト増加につながる。ギヤレス発電機の優位性が明らかになりつつある。

 第3は、バードストライク(鳥の衝突)の問題であり、とくに海岸近くの立地は、当初調査の予測を超えた事例が発生した。

 地元経済と雇用との関係では、風車の台数と規模がより大きくなれば、通年雇用の可能性が生じ、売電以外のプロジェクト、例えば、風車による水素燃料製造で、それを地域で使うなど、自然エネルギーのさらなる「見える化」と住民参加をすすめる必要があるという。

 まとめとして、自然エネルギー利用とFITとの関係では、既存設備分についてもFITを適用していくことは、大変重要であり、新設22円/kWhに対して、これまでの補助金額を補正して、15-18円/kWhで買取られれば、風力発電の継続性に対して、重要なインセンティブとなる。 ・・・ログインして読む
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筆者

吉田文和

吉田文和(よしだ・ふみかず) 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

1950年生まれ、兵庫県出身、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。北海道大学大学院経済学研究科教授を経て2015年から現職。北大名誉教授。専門は、環境経済学、産業技術論、主著『ハイテク汚染』岩波新書、『環境経済学講義』岩波書店、最近は低炭素経済と再生可能エネルギーの普及に関心を持つ。札幌郊外の野幌原始林の近くに住み、自然観察と散歩を趣味とする。

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