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再生可能エネルギーの現場(下) バイオガス編

吉田文和 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

バイオガスとは、家畜糞尿や生ごみ、飼料作物を、原料として回収・利用し、発酵させてメタンガスを発生させる。そのガスで発電機を動かし、発電するとともに廃熱を暖房などに使う。メタンガスが出た後の消化液は、良質の液体肥料(液肥)として、牧場や農場に利用できる。ドイツでは、約6,000基、デンマークでは約700基が普及している。両国の再生可能エネルギーは、風力発電とともにバイオマスが重要な柱となっている
拡大鹿追町のバイオガスプラント

 北海道内には約50基をこえるバイオガスプラントが設置されてきたが、実際に稼働しているものは、多くはない。もともとプラント導入の目的は、(1)悪臭汚染対策、(2)環境汚染対策、(3)水質汚濁対策、(4)電気の自家利用、(5)熱の自家利用、(6)売電、(7)消化液の自家利用、などの多目的であり、売電自体の位置づけ、重要度は必ずしも高くない。その現実を踏まえる必要がある。

鹿追町環境保全センター

 国内でも最大規模で実績をつむバイオガスプラントは、十勝の鹿追町の環境保全センターである。2007年から5年間運営されて、11戸の農家から、家畜糞尿を毎日2台の回収車で回収している。原料投入量は61トン/日、1日10回程度の投入になる。原料の平均滞留日は52日間で、バイオガスは2,338m3/日発生し、発電機で92%を消費している。平均発電量は、3,742kWh/日で45%が売電された。電力自給率は179%である。これまでの北海道電力による買取価格は、昼間は9.5円/kWh、夜は4.5円/kWhである。夜間の買取価格が低すぎる。実際には、自家発電できない時のための買電契約の基本料金が高いという問題がある。1年間で数時間利用だけでも契約する必要がある。60kW,150万円になる。個別ガスプラントの鈴木牧場(士幌町)でも同じ問題が発生している。鈴木牧場の発電量は年間21万kWh、うち5万kWhを売電、他方で2.3万kWh買電(自家発電が止まる時)し、その基本料金が高すぎ、電力会社は電線の地下埋設も認めず、メーターも高価で、様々な規制がある。別の牧場では、道路を隔てて発電設備があるという理由で自家発電も認められなかった事例がある。

 鹿追町の液肥の散布面積は561ha、散布量は184,400トンで、農家から500円/m3撒布料、液肥代金100円/m3をもらう。液肥は効果が高いので、引く手あまたであるという。

 経済収支を見ると、プラント利用料金875万円(12,000円/1頭)、売電収入494万円、液肥散布料金907万円、有機汚泥処理代金456万円、など合計2,800万円の収入である。これに対して、支出は、人件費951万円(3人分)、水光熱費258万円、消耗品費568万円、修繕費259万円、燃料費191万円、委託料150万円など、合計2,459万円となり、収支とほぼとんとんとなる。しかし、これ以外に、建設補助金が約8億3,400万円投入されている。これを年間に直すと、15年償却で5,650万円、1日当たり15万円となる。1日当たり発電量3,742kWhで割ると、約40円/kWhとなる。これが、バイオマス推進協議会のFIT算定価格39円に近い。

 バイオガスプラントは、多面的な機能を総合評価する必要がある。発電だけでは評価できない。土壌・地下水保全効果(農業環境保全)、CO2とメタン回収の効果(気候変動対策)、再生可能エネ生産効果(原発代替)を評価する、国の補助やボーナス価格制度(ドイツで実施)が必要である。

吉田弘志鹿追町長の評価

 鹿追町には2万頭の牛がおり、年間40万トンの糞尿を処理し、環境保全センターはそのうち3万トンのみの処理なので、あと3年で2基目をつくる計画である。FITによる売電価格39円は良い条件だが、既設分の扱いが問題で、従来のRBS制度をなくさないように要望している。売電価格が7-15円/kWhであれば、何とか採算が取れるという。バイオガスプラントは農業施設として位置づけ、エネルギーのみでなく、温暖化対策、多面的機能をはたしている。地下水・土壌保全効果が大きく、国の補助金の意義がある。課題としては、設備の耐久性、発電機の問題がある。実際、発電機が故障して、そのままメタンガスを大気放出する事例もある。今回のFITでは、下水汚泥とバイオガスが同じカテゴリーになるという問題もある。

日本のバイオガス施設の問題点

 バイオガスプラントで実際に稼働しているのは、集合型では鹿追町だけ、個別型では鈴木牧場などで、稼働数が極めて少ない。かつては、北海道で50基近くのプラントがあった。事業者はガスを売ることに特化し、発電事業は別の主体に担わせる方が良いかもしれない、デンマークなどもそうなっている。日本は規模も小さく、コストも高く、関係者の関心、研究、農家の関心も薄い。メンテナンスコストも高く、これまで売電価格が安かったので、投入原料も飼料作物のサイレージも入れないので、発電量が上がらない。しかし価格が40円台になれば、サイレージ投入の可能性もある。液肥の品質は高く評価されてきている。熱利用の問題では、もともと未利用が多い、先ず熱利用の徹底を図る必要がある。

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筆者

吉田文和

吉田文和(よしだ・ふみかず) 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

1950年生まれ、兵庫県出身、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。北海道大学大学院経済学研究科教授を経て2015年から現職。北大名誉教授。専門は、環境経済学、産業技術論、主著『ハイテク汚染』岩波新書、『環境経済学講義』岩波書店、最近は低炭素経済と再生可能エネルギーの普及に関心を持つ。札幌郊外の野幌原始林の近くに住み、自然観察と散歩を趣味とする。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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