2012年07月07日
ファストフードと言っても一時代前とは違う。ヘルシーを売りにした、健康志向の店 だ。カリフォルニアの大都市やニューヨークなどで、特にこの路線の店が強い。
米国は世界でも1、2を争う肥満大国で、ホームレスの3人にひとり、ペットの半数以上が太り過ぎという統計もある。そういうお国柄だから、当然とも言える成り行きだ。
あるときスープ&サラダが表看板の店で、こんなことがあった。家人が「この店は低脂肪のはずなのに、どうして太った女性が多いんだろう」という。確かに、太った女性おひとり様が食事している姿が、目につく。
なんだか逆だよね、などと言っているうちにふと、思い当たった。原因と結果を取り違えていたのでは、と。つまり体形に自信の無い人、カロリーが心配な人ほど、こういう店に引き寄せられるのではないか。
皮肉なことにそういう女性はたいがい、サラダの上にチーズをてんこ盛りにしている。その上デザートにも、激甘のソフトクリームをこれまた大盛りで食べたりしている。
つまり、表と裏があるということだ。低カロリー・低脂肪を表看板に掲げながら、裏では腹を満たす。アメリカ風に表現すると「サブスタンシャル(充実)感のある食事」を提供する。先ほど挙げた「太った女性のおひとり様」は、まさにこの表と裏の合わせ技で引き寄せられたのではないか。
今「表と裏がある」と書いたが、ここで言う表とは心の顕在(意識)レベルのこと、裏とは潜在(無意識)レベルだ。冒頭で「健康正義」と書いたのも、まさにこの両面の意味だ。目立ちやすい表層では正義(=健康にとって正しい道)を唱え、深層で実をとる、つまり消費者の抑圧された欲望にアピールする。
消費者が顕在レベルで欲しいもの、潜在レベルで欲しいものを、それぞれ与えている見事なビジネスモデルではないか。
話に多少飛躍があるかも知れない。だが飛躍ついでにもう一言いうと、この表裏関係がずばりそのまま、米国の政治風土にも当てはまる。ねじ曲がって了解不能に見える政治現象も、表裏関係を念頭に置くと腑に落ちることがある。当地の政治風土はしばしば「ダブルスタンダード」と揶揄(やゆ)されるが、まさにこういう構造と対応している。
人種と貧富の差は、その最たる例だ。 米国社会は事実上、
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