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パンダの死 他の生物を愛くるしく思うこと

武村政春 東京理科大学准教授(生物教育学・分子生物学)

上野のジャイアントパンダ(以降、パンダ)が出産した。上野では24年ぶりの自然繁殖。そのまま順調に育ってくれるかと思ったら・・・。

 思うところがあってこの原稿を書き始め、ひとまず脱稿したのが10日のこと。ところがその翌日のタイミングで、悲しいニュースが飛び込んできた。私にとって、「上野の森」は非常に身近な存在だ。散歩コースの一つでもあり、子どもたちとも時々遊びに行く。幼稚園の園外保育先でも、上野動物園は人気スポットである。

 ただ、そこにパンダがいるか、いないかということは、私にとってはじつは重要ではなかった。ここ数年、パンダがいない期間が続いたが、それが理由で上野動物園から足が遠のいたかと言えば、そんなことはない。

 石原都知事が、赤ちゃんパンダが生まれたことに対する感想を記者から求められ、「興味ない、そんなもん」と発言したとのニュースを聞いたとき、前後の文脈は知らないが、生物学を生業としている私もやはりまた、加熱する報道と、他国に高い金を払ってまでパンダを手に入れなければならない社会とは一体何なのかという厭世感とも相まって、「そうそう、興味ない、そんなもん」と思ったものである。しかし、その「興味なかった」はずの赤ちゃんパンダが死んだというニュースに接したとき、私の心には悔恨、悲哀、失意が入り交じったような、複雑な感情が湧いて出た。

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筆者

武村政春

武村政春(たけむら・まさはる) 東京理科大学准教授(生物教育学・分子生物学)

東京理科大学大学院科学教育研究科准教授。1969年三重県生まれ。1998年名古屋大学大学院医学研究科博士課程修了。博士(医学)。名古屋大、三重大の助手等を経て現職。専門は生物教育学、分子生物学、細胞進化学。著書に「レプリカ~文化と進化の複製博物館」(工作舎)など多数。【2015年10月WEBRONZA退任】

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