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マイナンバー法案の居心地の悪さ

中村多美子

中村多美子 弁護士(家族法、「科学と法」)

現在、第180回国会で、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」とその関係法律の整備等に関する法律が審議されている……と言って何の話かピンとくる人は多くないだろう。断っておくが、この原稿はこの出だしにピンとくる人向けに書いているのではない。

 マイナンバーって、どこかの電話会社のサービスだったか、どこかのプロ野球球団のファンサービス企画だったか、ラッキーナンバーと何か違うんだっけと思ってしまうような読者向けだ。

 「国民総背番号制」と表現すればピンと来る人も多いだろうが、今回の法案は「いわゆる国民総背番号制というものとは違う」という論者などが出てきて、話がややこしくなる。冒頭の法案が、マイナンバー法案などという海のものとも山のものともつかぬ名称で呼ばれるのは、過去に議論された類似の制度と差異をつけたいという狙いもあるのだろう。

 日本で個人を特定できる番号を一人一人につける、という制度については、比較的長い間議論されてきた。ちなみに、日本弁護士連合会は、「共通番号制度の問題点 Q&A」において論点をとりまとめている。

 そもそも、長期的に行政が管理できる個人識別番号をつけることに、何か問題があるのかという疑問は当然だ。筆者にも、

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