メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

メルトダウン 連鎖の真相 〜 NHK番組を観て

下條信輔 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

NHKスペシャル「メルトダウン 連鎖の真相」(7月21日放送)を観た。23日に出た政府事故調(畑村委員会)の最終報告と重なる点も多いらしいが、きわめて具体的で衝撃的な内容だった。忘れないうちに書き留めておきたい。

 福島第一原発1号機の事故顛末を採り上げた前編に続き、今回の番組は2、3号機の緊急対応に焦点を当てた。全電源喪失の結果、1号機は地震からわずか10時間後にメルトダウン。だが2号機、3号機は、メルトダウンまでにかなりの時間があった(それぞれ3日後、2日後)。

 それでもメルトダウンを防げなかったのはなぜか。番組はそこに的を絞り、専門家に協力を求めて技術的な要因を指摘した。

 番組を見逃した方のために、まずはポイントを要約しよう。

SR弁(主蒸気逃し安全弁)

2012年5月26日に撮影された福島第一原発

 SR弁というのは、緊急に原子炉から蒸気を外へ逃すための安全弁のことだ。

 電源喪失で冷却装置が止まり、原子炉内の水位が低下してメルトダウンの危険が生じる。それを防ぐために水を注入するが、炉内の圧力が高いままではそれができない。そこで減圧のためにこのSR弁を開いて、蒸気を外へ逃がす必要がある。

 2号機では、地震から3日後に冷却機能を失った。その前から、所内でかき集めた自動車用のバッテリーを使い、SR弁を開く試みは続けていた。だがどうしても開かず、メルトダウンにつながった。

 番組の新たな分析によれば、

・・・ログインして読む
(残り:約1612文字/本文:約2195文字)