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形だけの「国民的議論」はもういらない

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

2030年の原発依存度について「0%」「15%」「20~25%」の3案を作った政府は、新しい政策を決める前に「国民的議論」に取り組んでいる。7月2日から8月12日までパブリックコメントを募集。スタンフォード大教授を監修委員会の委員長にすえて初めて取り組む「討論型世論調査」は、山場の討論フォーラムを8月4、5日に開く。これは無作為抽出された全国の候補者から参加者を選ぶという、従来にない意欲的な取り組みだが、7月14日から始めた意見聴取会のドタバタぶりがひどい。ここに「国民的議論」を軽視する政府の姿勢が如実に表れている。

 意見聴取会は、14日のさいたま市を皮切りに土日祝日を使って8月4日まで全国11カ所で設定された。「事前公募した参加者から1つの案ごとに3人の意見表明者を抽選で選び、計9人が発言。その他の参加者はアンケートに意見を書く」という方針で始まったが、発言者が限られていること、質疑応答も許されていないことに不満が出たのは当然だろう。しかも、表明した意見がどのように政策決定に生かされるのか、明確な説明がなかった。

 そして、16日の仙台会場で東北電力の企画部長が原発推進論を述べ、17日の名古屋会場で中部電力の課長が「放射能で亡くなった人はいない」などと発言してどちらも会場が紛糾したことから、政府は電力会社員の意見表明を認めないことを決めた。また、22日以後の意見表明者は12人に増やし、増えた分は「0%」案支持者を中心に割り振ることにした。

 さらに、8月1日に福島で開く意見聴取会では、3案のどれを支持するかの表明は求めず、自由に意見を語ってもらうことにし、発言者も30人に増やす。古川元久国家戦略相が「福島は他地域とは異なる形で開く」と説明した。

 泥縄というか、無定見というか、これまでいかに国民の意見を聞こうとしてこなかったかが丸見えだ。

 国民の意見は簡単にはくみ上げられない。欧州ではこれまで、さまざまな工夫を凝らしてきた。今回、初めて日本政府が実施する「討論型世論調査」は、

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