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インターネットの進展が人間の知的能力を劣化させる可能性

伊藤智義 千葉大学大学院工学研究院教授

前回の論考で、ブッシュという科学者が、70年も昔に「人類の知識の総量は驚くべき割合で増えている」ことを認識し、「このままでは、いつか自分たちが生み出した情報の洪水の中で溺れてしまう」ことを危惧して、Memexというシステムを提案したことを述べた。それはインターネットとして現実のものとなり、社会活動を支える重要なツールとして、爆発的な進展を遂げている。

 しかし、あまりにも急速な変化は弊害も生み出している。匿名のひぼう中傷やインターネット犯罪、システム障害による世界的な影響など、大小含めると、毎日のようにニュースになっている。人間の精神活動に対しては、インターネット依存症が、これからますます深刻になっていくものと思われる。

 ここでは、本質的な問題として、インターネットの進展が、当初の目標を通り越し、逆に、人類の知的活動に負の影響を及ぼしているのではないか、という点について言及してみたい。私たちは、溺れることなく情報の海の中を上手に泳ぐ技術は会得したけれども、逆に、立ち止まって自分の頭で考えることをしなくなった(できなくなってしまった)のではないか、ということである。

 それを強く意識させられたのが

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