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BS朝日 日本再生プロジェクト「白熱セミナー 成功への道」 川村康文・東京理科大学教授 基調講演

WEBRONZA編集部

 「日本再生プロジェクト 白熱セミナー 成功への道」

 BS朝日と朝日新聞WEBRONZAのコラボレーションで生まれた、公開収録+イベントという新機軸の番組。各界のキーパーソンが一堂に会し、成功の秘訣を熱く語ります。その後、会場の一般参加者からの質疑に応答。人生の先達が、質問者の立場に立ってアドバイスします。番組は7月29日に放送されました。それぞれのゲストの方の講演と質疑応答をご紹介します。第二弾は川村康文・東京理科大学教授です。

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ゲスト

田中良和(グリー社長)

川村康文(東京理科大学教授)

和久井康明(クラレ会長)

MC

伊藤元重(東京大学大学院経済学研究科教授)、下平さやか(テレビ朝日アナウンサー)

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なぜ大学の仕事を選んだのか

川村康文・東京理科大学教授

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 今ちょっと、グリーの田中さんの話を聞いていて、いろんな話を考えていたんですけど、今の田中さんの話を聞いて話を変えて、「僕はどうして大学の仕事をしようと思ったのか」についてお話しした方がいいのかなと思います。

 小さいころ、小学生くらいは確かに研究者になりたいとかいうことは思ってました。で、成績はそう悪くはなかったと思います。そういう中で高校時代に劇的な体験を実はします。

 物理の授業の中で、いわゆるちゃんと理学部の博士課程を出てきた人がですね、授業をしてくれていました、結構、詳しいことをいろいろ教えてくれたんですけど、ある非常に簡単な、運動エネルギーの式があるんです。その式を黒板に書かれたんですけど、理解出来なかったんですね。僕の周りも、全然わかってないなって感じの雰囲気が漂ってました。

 なので、目立ちたがり屋の私はですね、手を挙げて「先生その式わかりません」と、「その式がでてきた理由を教えて下さい」というようなことを言ったわけですね、そうするとね、非常に困られて、当惑されてですね、「この式はどうやって出すかよくわかんないんだ」と、「覚えてないんだ」と、「だから君たちこの式とりあえず覚えといてくれると問題が解けるよ」という風に言われたんですね。それで僕はちょっとその時、がっかりしたんですね。

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 田中さんは、がっかりしてもビールを飲んで回復すると仰ってましたが、高校生はね、がっかりすると、ちょっとそういうわけにいかなくって… 周りの雰囲気を見ていてもですね、みんな「あー、物理はやっぱりわからないんだ」って暗い雰囲気が漂ったんですね。その時に僕は将来、物理の教師になろうということをじーんと感じましたね。

 僕は万博を小学生の時代に経験しています。ですから日本は科学技術立国であると思って育ってきた世代です。そういう国を継続して守っていく、繋いでいくという時に「自分が受けている物理の授業はこれでいいのか?」と思ったわけですね、周りの連中がみんなわかんないって感じで。これから将来、日本の科学技術どうなるんだという風に思いました。

 今もですね、確かに研究者養成ということで、いろんなプロジェクトは動いてはいるんですけど、その研究者養成ができるような、教員の養成ですね。そういう所へ繋いでいく役割… そういう感じでやってくると、大学ってちょっとどうなの?って感じで、自分が大学で改革していかないといけなんじゃないかなという風に思いました。

 今日はうちの学生もたくさん… 少ないかな? 来てますけれど、そういうわけで、今なにを大事にしたいのかということですが… 科学というものによって今の人類というのは、ある種、幸せな生活ができるのは確かです。医学の分野であれ、エネルギーの分野であれ… エネルギーといえば3・11以降は電気の問題があります。

 節電であれ、それで自然エネルギーをどうするか?原子力発電所をどうするか? こういうことを1つずつ、きちんと一番下の基盤から積み上げてやっていく学問が、物理学です。そういう物理学をしっかりとやってくれる若者が育たないと、言うならば何もない砂上の上に楼閣を建てるようなもので、いつ倒れてしまうかわからないというようなことになります。

 若者のみなさんもね、今日は多分、グリーの社長のお話とか聞かれて起業であるとか、色んなエネルギーを貰えたと思うんですけど、是非、会社に入って色んなことをされた時に、CSRとしてやってほしいことが1個あります。それは子ども達にサイエンスの楽しさを伝えていくような、そういうCSR活動をしてほしいなと…。

 社会全体で、じゃあ私たちはこんなことが提供できますよ。学校に対してこういうことがやれますよ、と。学校の先生一緒にやりましょう、とかね。子ども達というのはその先生のものじゃなくって、社会全体のものであるってことですね。これ、1番大事だと思うんです。子ども達は、私たち人間社会全体の宝物であるということが、これが1番大事で、ここを押さえていれ色々な形でサポートしてあげられると思うんですね。

 それをやっていくひとつのきっかけが、リアルに物事をすると…、実際に五感を使うということが非常に大事で、3.11以降、僕もその現状を目の当たりに見てきたんですけど、やっぱり人間は自然の災害とか威力に対してほとんど無力であると言うしかない面があります。だけど太古の時代から、太古というのは言い過ぎかもしれませんが、大昔から人間というのは自然に打ち勝ちながら今の生活を作ってきたと。

 五感で、手で土を握り、風が吹くのを感じたり、あるいはそういう風の音を耳でしっかり聞いたり、あるいはどっかで臭いがしているのを嗅いだりしてですね、例えばこちらで火事があるんじゃないか、鼻で臭いを嗅ぐとどうもこっちで、山火事があるんじゃないかと、いう感じで、五感で全部知りながら防衛し、自分たちの社会というのを、ちゃんと次に繋がるようにしてきたわけですね。ですから、まさに自然科学っていうのは何かというと、自然をよく観察して、自然に対して人間がどうやっていくのか、どう生きていくのかということをやっていくものだということですね。

 じゃあインターネットというのは、川村はどう捉えているんだという話になってくると思うんですが…。私はリアルに、手でハンズオンしながら、例えば何かで怪我をして血が出て痛いという感情を持ったり、物を持って重たいと感じたり、あるいは熱いと感じたりする、その五感が大事だということを言っていますので、それはインターネットを否定しているかと聞こえるかもしれません。

 でも、そうじゃないんです。そういう経験値が溜まりますよね、その経験値は、その場でしかないのです。必ずどこかでハンズオンで、五感を使って人間が自然と直接触れる、そういう非常に大事を部分を、忘れないようにITをうまく使って、世界全体が幸福になっていけるようになればいいなと思っています。

 私の話は以上で終わらせて頂きます。

【質疑応答】

伊藤 どうもありがとうございました。川村さんのサイエンスに対する思いが、何となく伝わって来たんですけど、このままでは日本のサイエンス駄目になっちゃうんじゃないかと、そう思った時にどんなことを実際にされたんですか?

川村 まずその段階では、やれることは少ないんですよね。ですから一つは大学へ自分が行って、そこで大学でやっていること自体を改革するということが非常に大事だと思ったので、その道をまず選びましたね。

伊藤 是非、会場の方から何か質問をしていただければと思います。

24歳女性 学生

 講演ありがとうございました。私は、早稲田大学先進理工学部の物理学科に所属していて、ちょうど私も物理やっていたので、とてもお話し興味深かったです。

 質問なんですけれども、先ほどリアルな感覚、五感を大事にすることが大事っておっしゃっていましたけれども、やっぱり教科書を読んでいても、覚的なことなんて全然なくて、すごく難しいですし、内向きになっている科学の世界について、どう思われますか?

川村 昔、スノーという学者がいて、彼が理科系文化と文系の文化というものがお互いに意志交流できなくなるんじゃないかということを、警鐘を鳴らしたわけですね。警鐘を鳴らされたことによって、改善しようという人たちもいたんですけど、それが未だに実現していないっていうのが、今のあなたがお感じになっている状況だと思うんですね。

 これは何らかの形で、理科系の人間の方から殻を打ち破って市民の皆さんにサイエンスのおもしろさであるとか、サイエンスの大切さ、ほんとに大切なんですよね、それが伝わってないんで、サイエンスの大切さを伝えていくということをやらないといけないなと。是非、あなたも将来ですね、きちんと物理学を研究をしていただいて、研究の成果を市民の皆様に、広くお伝えするようにしていただければ嬉しいなと思います。

女性 ありがとうございます。

24歳男性 学生

 今、私は情報工学の博士課程に進学しているんですけれども、研究者として生きていくということを考えた時に、若手研究者や博士学生などを取り巻く環境の課題や、問題点など、何かございましたらお教えいただけたらと思います。

川村 一つ僕は衝撃的な話を、今の大学じゃなくて前の大学の時に聞いたんですが、長野県の方にある大学にいたんですけれども、そこの地元の企業の会長さんで、結構日本で言うとメジャーな会社だったんですが、そこの会長が来られてですね。「我が社の社員、エンジニアが技術開発した商品が、社内コンペで上がっていくと、東南アジアの人たちの開発してきたものに負けちゃって落ちるんだ」と、「日本の理科教育がおかしかったんじゃないか? ゆとり教育とかをやったからじゃないか?」と言われて、「東南アジアの子供達の学ぶ理科の教科書と日本の理科の教科書を比べてどうなんだ?」というようなお話しをされましたけれども…。

 博士課程にいる、あなたのような人がきちんとポスト取ってですね、やりたいこと、あるいは、やってためになる研究をしていただいたら、それは海外から必ず引用されるんだと思いますので、頑張って欲しいなと思います。

男性 ありがとうございました。

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