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「ヒ素生命」はもう一回起き上がれるか?

内村直之 科学ジャーナリスト、北海道大学客員教授

2010年12月、発表された「ヒ素生命」はその後、大々的な議論を引き起こし、1年半後の今、一応の決着がつこうとしている。経過を見ていると通常の科学にありがちな「論争」に見えるが、いろいろな問題を含んでいるようでもある。時間を追った動きをリポートしたい。

 この話題については、2010年12月18日付けの「『ヒ素生命』の七転び八起き」で紹介した。生物にとっての必須元素の一つであるリンの代わりにヒ素を代用している細菌GFAJ-1の発見、という「本当だったら常識を変える大事件」に対し、背景を示しながら、発表後に他の研究者から疑問が続出した事態についても触れて「研究もまだまだすべきことは多いように思う」と書いた。

 論文を掲載した米国のサイエンス誌は、1年半後の6月3日付け電子版で「GFAJ-1はリンの代わりにヒ素に依存している証拠はなく、細菌の中にもヒ素は検出できない」という追試論文2本を公表した。さらに同誌は異例ともいえる編集部声明を発表、「新研究によれば、GFAJ-1は生物学的原則を破ってはいない。科学を追求する過程はおのずから修正されていく。なぜこの細菌はヒ素に耐性を持つのか、詳細な情報が望まれる」とコメントした(印刷版では、追試2論文は同誌7月27日号に掲載された)。

発表直後からの反論に、サイエンス誌も動いた
 前記事では、発表後2週間ほどのネット上で見られた反論を紹介した。科学ジャーナリスト、カール・ジンマーのブログでの動きやカナダ・ブリティッシュコロンビア大の微生物学者ローズマリー・レッドフィールドらの反論が主であった。その後の動きを見てみよう。

 ヒ素細菌発見者のフェリサ・ウルフ=サイモンとその研究について同誌2012年12月3日号で紹介した記者のエリザベス・ペンニシは、 ・・・ログインして読む
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筆者

内村直之

内村直之(うちむら・なおゆき) 科学ジャーナリスト、北海道大学客員教授

科学ジャーナリスト、北海道大学客員教授。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程満期退学。1981年、朝日新聞入社。福井、浦和支局を経て、科学部、西部本社社会部、科学朝日、朝日パソコン、メディカル朝日などで科学記者、編集者として勤務し、2012年4月からフリーランス。興味は、基礎科学全般、特に進化生物学、人類進化、分子生物学、素粒子物理、物性物理、数学などの最先端と科学研究発展の歴史に興味を持つ。著書に『われら以外の人類』(朝日選書)など。【2015年10月WEBRONZA退任】

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