2012年08月09日
効率や利潤の原理は常に圧力として働く。他方で馴れが緩みを許す。こうして、わずかずつより危険な方向へと押し流されて行く。
このメカニズムは、心理学的にもある程度理解されている。
ヒトも動物も、新しいモノに手を出して「何の害もない」と、それ自体が良いフィードバックとなる。そして以後そのモノに手を出す傾向が高まる。
たとえば、「ガルシア効果」と呼ばれる効果が、動物の学習で知られている。一言でいえば、毒についての一発学習だ。
動物は新奇なモノを食べて具合が悪くなると、二度と手を出さない。極端な場合、毒をカプセルなどに入れるなどして、効果を丸一日遅らせる。その間に動物はいつも通り食べたり飲んだりする訳だ。しかしいったん苦しみを味わうと、それら普段通りの飲食物ではなく、ずっと前に食べた毒団子が原因だと見極め、避けることができる。
そのメカニズムは今でも謎だが、もっとも有力な説はこうだ。普段の食物では「食べても病気にならない」ことが、それ自体報酬として繰り返し学習されている。まさに「便りがないのは良い便り(No news is good news)」という訳だ。そこで稀に珍しい食物を食べて病気になると、正しくそれに原因を帰すことができる。
原発の安全管理でも、馴れで手続きが慣例化する中、この「便りがないのは良い便り」現象が起きていなかったかどうか。
本欄で、
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