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環境と医療で都市をつくる、という話〈上〉

夏のドイツ報告

広井良典

広井良典 京都大学こころの未来研究センター教授(公共政策・科学哲学)

 「環境」と「医療」という二つの分野は、本来は密接に関連しているにもかかわらず、概して別個に論じられることが多い。たとえば、政府の新成長戦略でも、両者はそれぞれ「グリーン・イノベーション」「ライフ・イノベーション」という言葉ないしコンセプトでまとめられ、異なる分野として位置づけられている。

 しかし以前にこの欄でも述べたように(2011年8月20日と22日に掲載した「『節電の夏』に考える環境と医療〈上〉〈下〉」)、人間の病気や健康は何らかの意味で「環境」と深く関連しており――この場合の「環境」には自然環境のみならず、労働時間・働き方やコミュニティとのつながりなど社会的なものも含まれる――。とりわけ、慢性疾患やストレス・精神疾患などが病気の中心を占める現代は、このことがとくにあてはまる。

 こうしたテーマについて、私から見て先駆的な取り組みをしてきたと思われる国の一つは、ドイツである。ここでは、ドイツのいくつかの場所について、以上のような視点を踏まえた議論を展開してみたい。

 といっても、本稿は8月4日から13日にかけてドイツを旅した際の見聞記のようなものであり、前回の「鎮守の森セラピー」と同様、夏休み企画の読み物としてごく気軽に眺めていただければ幸いである。

ドイツ流の湯治場があった
 私は、海外で比較的長く滞在したのはアメリカなのだが(1988年~90年と2001~02年の計3年間)、ある時期から、社会のありようや「生活の質」という面ではヨーロッパがはるかに優れており、また何よりも暮らしやすいと感じるようになった(私の主観的な好みも関係するかもしれないが、それは、とくにドイツ・フランス以北のヨーロッパにあてはまる)。そうしたことの背景には、歴史や社会の成り立ちの相違とともに、福祉国家・社会保障や環境政策、まちづくりなどに関する公共政策や社会システムのあり方が深くかかわっているだろう。  そうしたなかで2003年以降、主にドイツを中心にヨーロッパを毎夏訪れているが、今回のドイツ行きもそうした流れのものだった。

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