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夏休みの楽しい思い出をブログなどネットで発信する方も多いだろう。だが、そこに載せた写真から思わぬ情報までわかってしまうことに、どれだけの方が気づいているだろうか。実世界の普段の生活において、たとえば、「これから、今週末まで家族全員でハワイに行ってきます」と家の前に立て看板をする人はいないだろうし、また、夜の繁華街で道行く不特定多数の人に、「私の5歳の娘ですが、今、××にある○○保育園に通っています」と自宅住所と共に我が子の写真を配る人もいないだろう。個人情報を無防備に公開することで引き起こる危険性を十分に認識しているからである。

 しかしながら、ネット上では、これらとほぼ同等の情報が無防備に流れていることがある。これを当人の「不注意」というだけで済ますことはできまい。サービスを提供する側が広く危険性を知らせ、社会全体で対処法を考え出す必要があるだろう。

 一時期、主婦の間では、ブログで子育て日記を発信することが盛んであった。これが個人情報を無防備に垂れ流していることに気づき、自粛した人も多い。閲覧するすべての人が悪意を持っていないという保証はないのである。

 スマートフォンや、GPS機能を有したカメラで撮影すると、撮影時の位置を自動的に記録してくれるという便利な機能がある。もちろん、これをオフにすればよいのだが、多くのユーザーはオフにする操作方法も良くわからない。そのまま、写真を撮り、ネット上に掲載すると、その写真を撮った位置も公開されてしまう。たとえば、SNS上で、自宅住所を公開している人はほとんどいないが、「今朝、自宅の庭に咲いていた花です」と言って、無意識に位置情報を含めた自宅の庭の写真を公開しているケースがある。これは自宅住所を公開しているのと同じである。

 こうしたケースは注意深く対応することで、個人情報の漏えいを自衛できる。一方、自衛だけでは対処できないケースが増えてきている。たとえば

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筆者

本位田真一

本位田真一(ほんいでん・しんいち) 本位田真一(国立情報学研究所副所長/計算機科学)

【退任】国立情報学研究所(NII)副所長・教授。1978年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。同年東芝に入社し、主としてソフトウェアの研究に従事。2000年にNIIへ。01年から東京大学大学院情報理工学系研究科教授を兼任。早稲田大学と英国UCL(University College London)の客員教授も務める。専門は計算機科学。工学博士。※2013年3月末退任

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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