2012年09月11日
「世界の亀山ブランド」と謳(うた)われたシャープに何が起きたのか? 雑誌や新聞が頻繁に報道しているが、それによれば「液晶テレビ価格が急激に下落した」、「2009年に4200億円を投資して立ち上げた堺工場が誤算となった」、「液晶テレビに代わる事業がなかった」などが原因と書かれている。
それはその通りなのだろう。しかし、私は、シャープが窮地に陥った真の原因は他にあるような気がしてならない。それは「技術への過信」と「世界展開の失敗」だと考えている。以下にその理由を述べる。
2004年、同志社大学で経営学の研究を行っていたとき、シャープを訪問して液晶技術の責任者をヒアリングしたことがあった。まず、「DRAMはサムスンなど韓国勢に駆逐されましたが液晶は大丈夫ですか?」と問うと、「シャープは液晶で圧倒的な技術を持っている。日本のDRAMのようにはならない」と自信満々の回答だった。
次に「ではなぜ、シャープの営業利益率はサムスンの1/3~1/10しかないのですか」と聞くと、「そうなんだ、なぜこのような差がつくか私にもわからないんだ」と言うのである。この回答には衝撃を受けた。なぜなら、利益率が悪い理由が分からなければ改善することができないからだ。
実際に、シャープの営業利益率は5%前後で推移し、リーマンショック後、急落したことが分かる(図1)。実は営業利益率5%は、日本の製造業の中では高い方だ。しかし、(日本を除く)グローバルスタンダードでは20~30%が当たり前なのだ。
DRAM撤退という手痛い敗戦を喫したにもかかわらず「技術では韓国や台湾には一切負けていない」と自惚(うぬぼ)れていた日本半導体。片や「オンリーワン」とか「完全ブラックボック化による一貫生産」と宣伝して技術に絶対の自信を持っていたシャープ。私はこの両者が非常に似通っていると感じた。そして、シャープの行く末を危惧した。
2007年の夏に48日間で世界一周した際、この危惧が現実となっていることを目にすることになった。2007年と言えばシャープが絶頂期だった頃であり、液晶テレビ「アクオス」は「世界の亀山モデル」と言われ、日本の薄型テレビ市場では40%を超えるトップシェアを獲得していた。
ところが、BRICs、東南アジア、欧米諸国など私が訪問した13カ国の家電売り場の光景は、日本とは全く異なっていた。
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