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「選択の重荷」にもっと敏感になるべきだ-新型出生前診断

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

胎児がダウン症かどうか、これまでより精度よくわかる新型検査法が注目されている。米国の会社が開発し、昨年から米国内で使えるようになったもので、日本でもその臨床試験を始めると報道された。妊娠早期(妊娠10週)に妊婦の血液を調べるだけで、99%の精度で判定できるという。しかし、「簡便に精度よくわかる」検査法の登場は、果たして歓迎すべきことなのか。

 これまでも、妊婦の血液を調べる検査法はあった。母体血清マーカー検査と呼ばれるもので、妊娠15~21週に血液をとると、胎児に異常がある確率を知ることができる。一人ひとりの確率が推計され、それがある一定値以上なら「陽性」、以下なら「陰性」と判定される。ダウン症の場合、検出率は86%とされており、これは100人のダウン症児が生まれたとき、母親のいずれもがこの検査を受けていたとして陽性の母から生まれたのが86人、陰性の母から生まれたのが14人ということだ。陰性でもダウン症児の可能性がある一方、陽性でも実際は異常がないという可能性もある。こうした限界があるため、日本ではこの検査は推奨されていない。

 ダウン症かどうかは羊水検査をすれば確定できるが、こちらは検査によって流産してしまうリスクがあり、安全とはいえない。

 新検査法は、胎児に悪影響を与えることなく、99%の確率でわかるという。本当にそれだけの精度があるのかを日本でこれから臨床試験するという段階だが、医療技術の面からだけ見れば画期的な検査法が登場したといえるだろう。

 導入する際の問題点として指摘されているのは、日本のカウンセリング態勢の貧弱さである。しかし、ちょっと待ってほしい。カウンセリング態勢を整備すれば問題はなくなるのだろうか。

 カウンセリング態勢を充実させてもなお残る大きな問題が、出生前診断にはある。それは、両親が背負う「選択の重荷」の深刻さだ。

 米国

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