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「遺伝子」という言葉と、「DNA」という言葉がある。

 二つとも、分子生物学の徒ならずとも、よく人口に膾炙している言葉であるけれども、この二つの言葉が指し示すものの関係、もしくはその違いについて、どれだけの人が知っているだろうか。いや、これは何も一般市民に限ったことではない。たとえ専門家――を気取っている私自身も含めて――であっても、はたしてどれだけの人がこれらの相違について正確に知悉し、正確に他人に伝えることができるだろうか。「遺伝子の本体はDNA」という言い方がある。高校でもそう学習するはずだが、この文章のありようからして、遺伝子とDNAとの間に横たわる、微妙な関係が見てとれるというものだろう。

 もしも遺伝子とDNAが同じものであれば、「遺伝子はDNAである」と言ってもよさそうなものだが、そうは言わず、遺伝子の本体はDNA、という言い方をわざわざするのである。してみると、少なくとも遺伝子=DNAではない。じつのところは、「遺伝子<DNA」なのである。なぜなら、これまでは「遺伝子」と言えばタンパク質の構造を決めている部分であって、ヒトゲノムと呼ばれる私たちヒトをヒトたらしめているすべてのDNAのうち、わずか2%を占める部分でしかなかったからである。ただし学術的には、タンパク質だけでなく、RNAの構造を決めている部分も「遺伝子」と呼ばれており、それはこの2%には含まれない。 ・・・ログインして読む
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筆者

武村政春

武村政春(たけむら・まさはる) 東京理科大学准教授(生物教育学・分子生物学)

東京理科大学大学院科学教育研究科准教授。1969年三重県生まれ。1998年名古屋大学大学院医学研究科博士課程修了。博士(医学)。名古屋大、三重大の助手等を経て現職。専門は生物教育学、分子生物学、細胞進化学。著書に「レプリカ~文化と進化の複製博物館」(工作舎)など多数。【2015年10月WEBRONZA退任】

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