下條信輔
2012年09月25日
今回の直接のきっかけは尖閣諸島の国有化だったが、周辺海域に1000隻(?)の中国漁船が向かうと伝えられ、中国フリゲート艦まで現れるなど緊張。2000年、2005年の反日デモに比べても、 今回はテンションがはるかに高い。日本製品を売る商店、日本食店などが「釣魚島は中国のもの」「この店のオーナーは中国人」といった表示を自発的に掲げて防衛に必死なのが、今回目新しいという。
中国での世論調査結果(9月7日付中国紙・環球時報)でも、この問題で「戦争が起こり得る」と考える中国人が半数以上。事実「戦争になる」というデマがウェブ上を飛び交い、浙江省温州市では食塩を買い求めて市民が長蛇の列との報さえあった(9月17日付人民日報;同日読売オンラインによる)。デマと世論が相互作用すると、自己達成予言的な効果をもたらすのでは、と心配になる。
こうした抗議行動が周期的に繰り返され、エスカレートしがちなのはなぜか。またなぜ指導者は操縦を誤り、時として国際紛争へと「押し出されて」しまうのか。
しっぺ返しの応酬はエスカレートしやすいが、そこには複数の心理メカニズムが働く。もちろん根底に資源、防衛戦略などを巡る争いがあるのは、前提だ。
社会心理学者なら、まず浮かぶのは「リスキーシフト」という答えだろう。外圧への対応を巡って集団内で論争になると、より過激な意見に引きずられる。そういう一般法則のことだ。これは誤ってはいないが、どちらかといえば結果の記述で、原因の説明になっていない。
より本質的かも知れないのは、損害の評価が、攻撃側と被害側で異なる点だ。つまり
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