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前稿では、中国の反日デモを巡り、「応酬がエスカレートする」心理メカニズムを分析した。まず、攻撃側と被害側とで事態の見え方が違う。特に損害の強さが食い違って知覚され、記憶される。第二に、何が起きても整合的に解釈し、自分に都合の良い論理を強化してしまう性向。この辻褄合わせバイアスは、コミットメント(関与)が大きいほど大きくなる。

 前稿でも書いたが、「世論を作って政策を浸透させる」中国特有のやり方は、過熱すると歯止めが効かなくなる危険をはらむ。

拡大9月16日に上海で起きた反日デモ。参加者の一部は「私たちはあなたを思っています」と書かれた故毛沢東主席の肖像画を手にしていた=奥寺淳撮影

 中国政府はぎりぎりまでデモを抑制せず、むしろ助長してきた。たとえば中国外務省は、反日デモで日系企業に大きな被害が出たことについて「その責任は日本が負うべきだ」と主張(9月17日)。また習近平国家副主席も米国防長官との会談席上、 尖閣諸島国有化で日本政府は「茶番を演出」と批判(9月19日)。そういう後押しもあって抗議行動は過激化した。

 他方で、政府や共産党への批判は徹底的に押さえ込む。その方針はこれまでのところ、一応成功しているように見える。

 しかし。中国経済が停滞し、貧困若年層を中心に不満が高まり、その矛先をかわそうとして外敵への敵意を誘導している。この分析がもし正しいとしたら、中国政府のこの綱渡りがいつまで続くか、心もとない。

 一方イスラム世界では、

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筆者

下條信輔

下條信輔(しもじょう・しんすけ) 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授。認知神経科学者として日米をまたにかけて活躍する。1978年東大文学部心理学科卒、マサチューセッツ工科大学でPh.D.取得。東大教養学部助教授などを経て98年から現職。著書に『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)『〈意識〉とは何だろうか』(講談社現代新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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