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福島のデータを見て考えよう

内村直之

内村直之 科学ジャーナリスト

福島原発事故から1年半が過ぎた。放出された放射性物質による不安は消えないままだ。国の各府省職員有志による講演会シリーズ「放射線について『知って・測って・伝える』ために」に出てみた。放射性物質と放射線の基礎知識やリスクの考え方・伝え方などについて、現場に役立つ勉強をしようという試みである。多くの方にも参考になる内容と思えたので、ここで紹介したい。思い込みにとらわれずにデータから判断する人が増えることを願ってやまない。

 講演会の講師は、1回目(9月5日)は学習院大学理学部教授の田崎晴明氏(理論物理学)、2回目(9月18日)は東京大学理学部教授の早野龍五氏(実験物理学)、3回目(9月26日)が食品問題などに強い科学ライターの松永和紀氏だった。田崎氏は、これまで難解な放射線をめぐる知識を噛み砕いて整理、『やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識』として無料の電子版と有料の印刷版で発表したばかり。早野氏は、スイス・ジュネーブのCERN(欧州合同原子核研究機関)での反物質研究のかたわら(いや、いまやどちらがかたわらか、わからない)自らの知識・経験を縦横に使い、食品汚染や人の内部・外部被曝など福島の放射能に立ち向かう現場をバックアップしている。

福島では……

 今、福島県内の放射線の強さ(空間線量)はどのくらいなのだろう。

拡大福島県のホームページから(9月23日17時現在) 

 上の表の通りである。高いところでは事故前の10倍を超える。1年間に1ミリシーベルト被曝する空間線量は単純計算すると1時間あたり0.114マイクロシーベルトだから、福島県内ではその数倍の場所もあることになる。屋内では屋外よりだいぶ低いところも多い。自ら線量計を使って自宅をあちこち測り、なるべく低い場所で寝るなどの工夫をする住民も少なくない。

 個人の外部被曝を測る積算線量計(ガラスバッジ)の測定結果(昨年)では、99%が3ヶ月で1ミリシーベルト未満という結果(福島市)などが出ており、年間で4ミリを超える例はごく一部、という。除染や暮らしの場所などを工夫して年間1ミリまで下げるべきだが、大きな心配はないようである。

 一方、内部被曝については、

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筆者

内村直之

内村直之(うちむら・なおゆき) 科学ジャーナリスト

科学ジャーナリスト。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程満期退学。1981年、朝日新聞入社。福井、浦和支局を経て、科学部、西部本社社会部、科学朝日、朝日パソコン、メディカル朝日などで科学記者、編集者として勤務し、2012年4月からフリーランス。興味は、基礎科学全般、特に進化生物学、人類進化、分子生物学、素粒子物理、物性物理、数学などの最先端と科学研究発展の歴史に興味を持つ。著書に『われら以外の人類』(朝日選書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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