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数学五輪の順位続落、どうする日本?

秋山仁

秋山仁 数学者、東京理科大特任副学長

国際数学オリンピック(IMO)は、高校生が長時間かけて難問に挑む催しだ。毎年開かれ、今年は7月9日~7月15日にアルゼンチンであった。各国が6人の代表を選手団として送る。日本の6人は銀メダリスト4、銅メダリスト1、優秀賞受賞者1と大健闘したのだが、国別に見ると100ヶ国中17位だった。実はこの数年間、日本チームの成績は下降傾向にある。各国政府が若者の才能教育に力を入れる中、このままでは日本の順位は下がる一方だろう。
数学五輪アルゼンチン大会の開会式=数学オリンピック財団ホームページより

 数学五輪の日本の最近の成績は、2009年のドイツ大会では参加104ヶ国中2位、2010年のカザフスタン大会では96ヶ国中7位、2011年のオランダ大会では101ヶ国中の12位だった。

 一方、アジアの近隣の国々は最近、素晴らしい成績を挙げている。例えば、お隣の韓国は今年1位に輝いた。10年ぐらい前から飛び級制度を導入し、ソウルとプサンを皮切りに韓国全土に4、5校の英才学校を設け、国を挙げて若い優れた頭脳の育成に努めている。

 今年5位になったタイも好成績が続いている。タイ国立科学技術開発庁(NSTDA)がバンコクの郊外に大学並みの研修施設、青少年科学教育センターを設け、常時、若者たちの才能教育に努めている。日本も、スポーツの分野のみならず、科学の分野の才能教育のあり方を改めて考えてほしいと思う。

もちろん、数学の若き才能が、数学五輪で試されるような“与えられた問題を解く能力”だけで計られるものではない。“与えられた問題を解く能力”は数学の研究の世界を豊かにする能力の中で、いわば多岐に亘るスポーツのオリンピック種目の中の1ジャンル(たとえば陸上競技)といったところだろう。数学オリンピックは若い数学の才能を育てるための絶対唯一のものではないが、若き才能のひとつの伸長方法として位置付け、多くの国が協力し取り組んできたのである。 

才能教育に冷たい日本

 筆者は20数年前に数学五輪に日本チームを初参加させようと、

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