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続・福島のデータを見て考えよう~チョウの奇形の原因は

内村直之 科学ジャーナリスト、北海道大学客員教授

ヤマトシジミの奇形は放射能が原因か?

 事の始まりは、琉球大のチームが科学誌「ネイチャー」の姉妹誌「サイエンティフィック・リポーツ」に8月9日付で発表した論文である。タイトルは「ヤマトシジミに対する福島核事故の生物学的インパクト」(The biological impacts of the Fukushima nuclear accident on the pale grass blue butterfly)で、10ページある。英語論文だが、無料で読める。論文要旨によると、「日本に普通にいるヤマトシジミへ原発事故が生理的・遺伝的影響を引き起こしていることを示す。2011年5月に、福島県内で成虫を採集、その内には比較的軽度の異常を示しているものがあった。その成虫を交配した2世代目はより重大な異常を示し、その子孫に遺伝した。同年9月に採集した成虫は5月よりも重大な異常を示した。同様の異常は、汚染されていない場所の個体において外部・内部被ばくさせることで実験的に再現した。この種に福島原発からの人工的核種が生理的・遺伝的ダメージを与えた、と結論する」という。これは大変だ……。

拡大

 日本国内では8月10日に共同、時事の両通信社が伝えたが、それほど注目されなかったようだ。ところが、海外のメディアはここぞとばかり飛びついた。まずBBCだ。「福島のチョウに『重大な異常』」と、羽が萎縮した写真を載せた記事を8月13日に出した。 

 同日にCBS、スペイン・エル・ムンド、ついで14日にはCNN、英国タイムズ、英国テレグラフ、AFP、フランス・リベラシオン、同ル・モンド、ドイツ・シュピーゲル……いずれもオンラインで知るのみだが、欧米では相当派手に報道されたのではないだろうか。

 実は、

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筆者

内村直之

内村直之(うちむら・なおゆき) 科学ジャーナリスト、北海道大学客員教授

科学ジャーナリスト、北海道大学客員教授。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程満期退学。1981年、朝日新聞入社。福井、浦和支局を経て、科学部、西部本社社会部、科学朝日、朝日パソコン、メディカル朝日などで科学記者、編集者として勤務し、2012年4月からフリーランス。興味は、基礎科学全般、特に進化生物学、人類進化、分子生物学、素粒子物理、物性物理、数学などの最先端と科学研究発展の歴史に興味を持つ。著書に『われら以外の人類』(朝日選書)など。【2015年10月WEBRONZA退任】

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