2012年10月17日
私が一番考えさせられたのは、ある大学の教育学部の先生からのコメント。小学校の教職課程に在学中の学生20人程度に「月が満ち欠けする理由を正しく説明できるか」と質問したところ、4割程度が「できない」と回答した。この結果自身に驚くべきかも知れないが、話はさらに続く。「できる」と回答した6割の学生に実際に説明させたところ、何とその半数が間違っていたとのこと。つまり、できないと回答した4割はむしろ罪がなく、間違っているにもかかわらず正しい説明ができると考えていた学生が3割いたことこそが大問題である。
この割合が統計的に有意かどうか、また月の満ち欠けという現象をとりあげることが適当であるかどうかは別として、この例は極めて示唆的である。小中高で何をどこまで教えるべきか、教科書はどうあるべきかという難問に内在するジレンマも見え隠れする。特に大学受験と絡んで選択科目が多くなる高校での理科教育について考えてみたい。
高校の理科は、物理・化学・生物・地学の4科目からなっているが、授業時間数と大学受験との絡みで、理系の生徒に対してですらそれらをすべて教えこなすことは不可能な現状にある。一方、今や、物理だけ、生物だけ、といった分断的な理解ではなく、より広く科学の基礎を身に付けている必要は高い。さらにそれらは文系・理系といった浅薄な分類に依存するべきではない。まさに科学リテラシーである。
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