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ガードン博士は山中教授なしにはノーベル賞を受賞できなかったか?

佐藤匠徳 生命科学者、ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括

今年のノーベル医学生理学賞がケンブリッジ大学ガードン研究所のジョン・ガードン(John B. Gurdon)博士と京都大学の山中伸弥教授に決まった。「成熟し全能性を失った細胞が、全能性をもった未成熟の細胞へリプログラム(初期化)できることの発見」が授賞理由だ。発表直後のインタビューで、ガードン博士は「私は、山中博士に感謝している。山中博士の発見がなかったら、わたしの1962年の発見は日の目をみることはなかったであろう」とおっしゃっている。本当にそうであろうか?

 筆者の答えはノーである。筆者は逆に山中さんの受賞こそ、ガードン博士の発見なしにはありえなかったと断言できる。その理由を以下に説明する。

 先ず、ガードン博士の1962年に発表された発見(Journal of Embryology and Experimental Morphology 10:622-640,1962)と山中さんによるiPS細胞作成が発表された2006年(Cell 126:663-676, 2006)の間に何がおこったかを知る必要がある。この約半世紀という長い年月の間に、実はさまざまな紆余曲折のドラマがあったのである

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