中村多美子
2012年10月29日
2010年6月、イタリアの検察官は、6人の科学者と1人の政府関係者を刑事訴追した。そして、2012年10月22日、求刑を上回る禁錮6年の実刑判決がなされたと報道されている。
実は、判決に先立つこと約1年前の段階から、『ネーチャー』は、2011年9月5日発行号で「AT FAULT?」というタイトルで、この事件を大きく取り上げていた。
他方で、『サイエンス』を発行する全米科学振興協会AAASは、地震の予知の失敗について科学者を刑事訴追することは、「unfair and naive」(「不公正で、無邪気」)であるとして、イタリアの当局に強い懸念を示す書簡を送っていた。
本年10月22日の判決を報じる日本のメディアも、このラクイラの判決を「地震予知失敗」で有罪などと見出しにしているものが多い。
しかし、この事件は、地震予知の失敗をめぐるものではそもそもない。『ネーチャー』の上記記事の中でも、担当検察官Fabio Picuti氏は、次のように述べている。「私は気が狂っているわけではない。彼らが地震を予知できないことは知っている。訴追の理由は、彼らが予知をしなかったことではない。州の当局者として、彼らは、ラクイラに存在していた危険を評価し明らかにする法律上の義務を負っていた。彼らは、あらゆる要素を考慮に入れて、リスクを評価しなければならない義務を負っていたが、そうしなかったのだ」
カナダのテレビ局CBCは、有罪とされた事実、すなわち、委員たちは「何をして」「何をしなかった」のかということについて、比較的詳細に報じている。
CBCによると、
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