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弁護士が見たiPS研究(その1) 科学技術の世界戦略に法律家がもっと関与すべし 

中村多美子 弁護士(家族法、「科学と法」)

山中伸弥教授のノーベル賞受賞には、心からお祝いを申し上げたい。ただ、新しい科学技術と社会の相互作用に関心を持つ法律家として、喜んでばかりはいられないとも強く感じる。iPS研究をめぐって考えたことを、これからいくつか書いていきたい。

 研究者、特に、基礎研究に従事する人は、普段の生活で、「法」を意識する場面にはまず出くわさないだろう。私が、研究者と話していても、共通の話題となるのは「知的財産権」か「製造物責任」ぐらいなものだ。というより、それ以外には、共通の話題がほとんどないといっていい。科学技術研究者の多くは、何となく研究と社会との間に接点を感じつつも、その具体的なポイントを特定できないことが少なくないように思える。

 そうした経験からすると、山中教授が所属する京都大学が、iPS細胞の基礎研究段階から、いち早く知的財産戦略を展開したことは特筆に値するだろう。

 iPS細胞をめぐる熾烈な研究競争は、いかに早く、優れた研究業績を上げ、専門誌に論文をいかに早く投稿するかをめぐる競争である。これは分野を問わず、研究者の本分となる競争である。

 他方で、基礎研究を応用した技術開発が、近い将来、大きな市場を形成することが予想できる場合、研究者は、社会的な競争にも巻き込まれていく。iPS細胞研究の場合、その研究成果が将来の創薬・再生医療といった産業に結びつく大きな可能性を持っているので、知的財産戦略の問題は、かねてから強く意識されてきた 。

 例えば、産官学ジャーナル2009年6月号に、

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筆者

中村多美子

中村多美子(なかむら・たみこ) 弁護士(家族法、「科学と法」)

弁護士(大分県弁護士会)。1989年京都大学農学部入学、翌年法学部に転入学。95年司法試験合格。京都大学博士(法学)。関心領域は、家族法や子どもの権利、そして「科学と法」。09年度から始まった科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センターの「不確実な科学的状況での法的意思決定」プロジェクト代表を務めた。日弁連家事法制委員会委員、大分県土地収用委員会会長、原 子力発電環境整備機構評議員。【2017年3月WEBRONZA退任】

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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